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…どうしてキョウ君は、そんな前向きに物事を捉えられるの?
思えば、僕を好きになった時も迷ったけど自分の気持ちを受け入れたと言っていた。
キョウ君に男女の幸せの違いを問われて、僕は何も言えなかった。
「薺にとって男の俺よりも女との方が幸せになれると思う?」
「僕はっ…男とか女とか関係ないよっ。キョウ君だから…キョウ君といることが僕の幸せなんだから」
「うん、俺も薺と一緒。性別とか関係なく白崎薺って言う人間に惹かれたんだから」
痛いぐらいに抱き締められている腕を心地いいと思うほど、僕はキョウ君のことが好き。
それは変わらない…変わらないのに、不安は消えることない。
だって、僕は両性愛者だけど、キョウ君は元来異性愛者だ。
きっと、いつか女の方がいいと思う時が来るかもしれない。
…あぁ、こう考えてる辺り、僕は全く成長できていないしキョウ君を信じていないな…。
自分のことだからこそ、呆れから自嘲な笑みが零れた。
「…薺?」
「ん…付き合うことになった日もこんな話をしていたな…と思って」
「あぁ、あの時も今も薺は自分の魅力に気付いてないから、彼氏としては気が気じゃないよ」
はぁ…とわざとらしく溜息を吐くキョウ君にクスクスと笑った。
それを言うなら、キョウ君の方が魅力的で周りからの視線に嫉妬してるよ、と言いたい。
少し場の雰囲気が柔らかくなったのは気のせいじゃないだろう。
今まで感じていた漠然とした不安が、キョウ君の温もりによって薄れたから。
「…ねぇ薺」
「ん、何?」
未だに緩まない腕の中でキョウ君がゆったりとした口調で僕を呼んだ。
そんな彼の顔が見たくて上を向く。
「俺はどれだけでも薺に伝え続けるからね。俺にとって薺がかけがえのない存在だって…だからさ、今は不安なままでいいよ。その代わり、その不安を俺に言って。薺の為なら俺はなんだってするから」
その言葉はありきたりかもしれない…けれど、今の僕にとって胸に響く言葉だった。
もう一度彼の胸に顔を埋めて、鼻腔いっぱいにキョウ君の香りを嗅いだ。
不安を誰かに話すことは勇気のいることだ。それを自分ができるかどうかは分からないけど、キョウ君になら話せるかもしれない…そう思った。
けれど、今はその不安を話す以外のことで消したいと思う。
「…ねぇ、キョウ君」
「ん、何?」
「さっき言ったよね…僕の為なら何でもするって」
「えっ?……まぁ、言ったけど…」
僕の話したい意図が分からないからか、語尾になるにつれて声が小さくなる。
僕の願いを叶えてくれるかは分からないけど、言ってみる価値はあると思い、一つ深呼吸をして彼の目を見ながら言う。
「じゃあさ…僕のこと、抱いて?」
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