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そんな表情をさせているのが、自分なのか、それともキョウ君の知り合いなのか分からない…けど、哀しんでることには変わりない。
僕はキョウ君の頬を撫でるように手を動かした。それに対してまるで、ご主人様に甘える犬のように頬擦りをするキョウ君。
「…あの人みたいに、なって欲しくない」
「キョウ、君…」
憂を帯びた伏し目がちな瞳に心臓がギュッと鷲掴みされるように苦しくなった。
僕は自分のことしか考えていなかった。
僕に暗い過去があるように…人それぞれ何かしら過去を持つ。
それは、決して楽しい過去だけじゃない。辛くて忘れたい過去もあるだろう。
そして、キョウ君にもそんな過去があってもおかしくはない。
僕は堪らずキョウ君の全身を抱き締めたくて、立ち上がり頭を抱き寄せて掻き抱いた。
「えっ、ナズ?」
「っごめんね、いつもいつも自分のことしか考えれなくて…キョウ君のことを知ろうとしなかった」
「…違う、俺が悟られないように振舞っていたからだよ」
「でもキョウ君は僕のことを知ろうとしてくれた。僕だって誰にも気付かれないようにしてたのに」
悔しい。心から好きなのに…好きだけじゃ乗り越えられない壁がある。
キョウ君に信用されていないとは思わない。でも、全部を預けられるほどの信頼はまだないだろう。
そして、それは僕もだ…。
「…好きだからこそ気付けることもあるけど…好きだけじゃどうにもならないこともあるな…」
「っ、ははっ」
「えっ、ちょっと待って!そこ笑うとこ!?」
僕と同じことを考えていたことに驚いて…そして同じ考えを持つぐらい僕達は似ていると考えると笑えてくるよ。
信用とか信頼とか…それは少しずつ、僕達のペースで築き上げて行けばいいんだ。
「ふはっ、ごめんごめん。僕もキョウ君と同じことを考えていたからビックリして」
「ふふ、似た者同士かな?」
「きっと、そうだよ」
抱き締めていると今度はキョウ君の顔を見たくなり、抱き抱えていた頭から距離を取った。
キョウ君を見下げる僕と僕を見上げるキョウ君。普段とは違う立場はなんだか慣れない。
「…ナズが笑わすから昂ぶってたモノが萎えてきたよ」
「ソレを鎮める為に言ったわけじゃないんですけど…」
「はー、これで治らなかったらホテルに引き込みそうだった」
「……え、冗談だよね?」
「うん、冗談」
ニッコリと輝かしい表情でその冗談は、何とも複雑な気持ちになるな…。
そう思っていたら、いきなり腕を掴まれて引っ張られ、その勢いで彼の首筋に顔を埋めた。
「っ、急に何…」
「約束、守ってね?自分を卑下することは言わない」
「…正直、守れる自信がないからさ、キョウ君が気付いたら叱ってよ」
「ふっ、そう来たか…分かったよ。ナズが自信を持てるようにビシバシと叱って嬲ってあげるから」
「あれ?なんか別の意味も含んでない?」
「ふふ、気のせいだよ」
首筋から上を見上げたらキョウ君と目が合い、今の会話がおかしく思い互いに笑い合った。
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