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互いに気まずい雰囲気を醸し出してしまい収拾がつかなくなった時、兄さんが「薺、おいで」と僕を見て手巻きした。
どうすればいいか分からなくて視線を泳がしながら、取り敢えずその指示に従う。
座る兄さんと立っている僕。身長は兄さんの方が5㎝程高いが、今は逆転して僕が見下ろす形となった。
「…今日の夕飯、何がいい?」
「……えっ?」
「ん?今日は早く帰って来れたし、久々に皆でご飯食べれるでしょ?」
「…そう、ですね」
「柊が帰って来るのはもう少し先になると思うから、薺も手伝ってくれる?」
「俺も手伝おうか?」
「お客さんはソファに座ってテレビでも観ててください」
兄さんのさり気ない気遣いに場の空気が和んだ。
折角兄さんが何がいいか聞いてくれたことだから、僕の大好物であるオムライスを作ることにした。
ほんの1ヶ月ぐらい前の僕なら、誘われたとしても一緒に台所に立つことはなかっただろう。
人の気持ちが分からないこと程怖いモノはない…臆病であった僕は、兄弟ですら一緒にいることが怖かった。
…少しずつ皆と距離を縮めて行きたい…あわよくば、キョウ君を兄弟に紹介したいな…。
そんな淡い期待を持ち、兄さんと夕食の準備に取り掛かろうとした時、それは突然起きた。
ガチャン、と玄関が開く音がした後に「…ただいまー」と確実に男では出せない女性特有の高い声が聞こえた。
その瞬間、その場にいた僕達は凍り付く。
「…誰かお客さんが来てる…っ」
リビングのドアを開けながら喋っていた声が詰まった。
その理由は2つあるだろう。
1つ目は、大嫌いは僕がここにいるから。
そしてもう1つは…。
「…お邪魔してます。こんな時間に訪ねて来てしまい申し訳ありません」
「…そう言うなら、何故来たの?」
「っ母さん!」
礼儀正しく蓮さんが挨拶をしているのに、母親はまるで汚いモノを見るような軽蔑した視線を注ぎ嫌味を発した。
…そう、母親は兄さんと蓮さんの付き合いを知っているが認めてないから、ここに蓮さんがいることが気にくわないのだ。
「棗、貴方もいい加減目を覚ましたら?確かに彼はいい人だと思うけど、男同士で付き合うなんて馬鹿げてるわ」
「止めてよ母さん!俺は性別なんて気にしない。蓮だから好きになったんだ…俺はこの恋愛を馬鹿げてるなんて人に言われたくない!」
「っ、母さんは貴方のことを思って…っ」
言い合う2人を僕はジッと…無関心で話を聞く。そうしないと、自分の心が壊れそうだと思ったから。
「お言葉ですが、俺は本気です。本気で棗を愛してるから貴女には嘘を吐きたくなかった」
「愛してるですって?約束された未来がないのに男同士が付き合うなんておかしいわよ!」
母親の何が何でも否定する鋭い言葉が胸に突き刺さる。
それは全て、自分にも言われてる気がしているからだ。
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