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149.
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ガチャン、と薺がリビングのドアを開けて出て行く。
そして数分後、階段を降りてくる音がして母さんが慌ててリビングから出た。
薺を引き止めようとしてるらしいが、薺の声がしない辺り何も反応を見せなかったと推測出来る。
そして再び、俺達がいるリビングへと入って来た。
「…母さんは薺が憎いの?」
「そんなことないわよっ!薺は私の大事な息子よっ」
「…違うね、本当は心の奥底で薺を憎んでるよ。じゃないとあんなこと口にしない」
「あれはついっ…」
「…俺は昔も、"あの日"からもずっと…薺の味方だよ。だから、いくら母さんでも薺を傷付けるのは許さない」
俺の大事な、大事な弟。俺と容姿が似ているけど俺と違って繊細な心を持っていて、誰よりも傷付いてきた。
そんな弟が変わってしまった日のことはよく覚えている。
けれど、どんな薺でも俺の大事な弟には変わりない。
これ以上母さんと同じ部屋にいることは出来ないと思っていたら、「…仕事に戻るわ。遅くなるから戸締まりしっかりね」と言い出て行った。
母さんが居なくなったことにより、気が張っていたのかその場に座り込んでしまった。
「…棗」
「っ蓮。お願い…側にいて」
「あぁ、いるから。誰が何を言おうとお前の側にいてやるから…俺の前では無理するな」
「っあ、うっ…っっ」
座り込んだ俺の身体を包み込むように強く、強く抱き締めてくれる。
家族間であったことを…薺に起きたことは蓮には話してない。
だから、さっきの母さんの言葉や薺の反応は意味の分からないことだっただろう。
けれど、それを聞こうとはしない。気になっていると思うけど何も言わないのは蓮の優しさだ。
母さんに反対されたことに対してなのか、薺を傷付けてしまったことに対してなのか、どちらか分からないけど泣きたくなった。
そんな俺を抱き締める蓮は「大丈夫、棗は1人じゃねぇから…」そう、俺を宥め続ける。
家族の形が壊れてしまった日から、家の中がギスギスと空気が悪くなった。
俺はそんな空気を変えたくて、皆と平等に接していたのに…。
その努力が一瞬で消えてしまった感覚に陥った。
「っ俺、頑張ったのに…っ」
「あぁ」
「薺との距離も…縮まったと思ってたのに…また開いたらどうしようっ」
「そうなったらまた1から頑張ればいいんだ。時間はいくらでもあるし、今度は俺も一緒に薺と向き合ってくから」
…あぁ、何でこの人はこんなに優しいんだろう。
弱音を吐いてる俺を呆れるわけでもなく、一緒に頑張ってくれると言う。
俺は涙を拭って蓮の顔を見る。
「…ありがとう、俺も蓮を好きになって良かった…愛してるよ」
「ふっ、俺も愛してる」
小さな笑い声と愛の言葉の後には、甘い甘い口付けが降った。
本当にありがとう、蓮。
***
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