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今日は家でゆっくり出来ると思っていたのに、僅数十分で出掛ける羽目になるとは思わなかった。
「…ははっ、気持ち悪い、か…っ」
母親の言った言葉が脳裏にこびり付いて離れない。
そりゃ誰でも思う。血の繋がった親子が何をトチ狂ったのか、性的なことを及ぼうとしていたら…。
例えそれが同意じゃなくても、被害者である息子に対しても思うことだ。
それに加え、今は僕も男と付き合っている訳で…。
僕の生き方も全否定された気持ちになった。
キョウ君には母親に言わないのは、僕が嫌われているからと話したが、それ以外の理由で母親が同性愛に対して否定的であることも、言わない要因の一つだ。
もしかしたら、言った所で何の興味も持たれないかもしれないけど、言う言わない、どちらを選んでも傷つくのならば、僕は言わない方を選択する。
「…"あの日"までは確かに、僕達は家族だったのに…」
ポツリ、誰も歩いていない道で自分の声がやけに響いた気がした。
"あの日"が僕達家族の形が変わってしまった日だけど、あの日じゃなくてもいつかは起こっていたことだと思う。
少なからず、父親は僕をそう言う目で見ていたのは"あの日"よりもずっと前と言うことだから。
「…僕の所為で家族は壊れた…僕なんか居なかったら今でも家族は幸せに過ごせていたのかな…」
もう何度も何度も思ってきたこと。
起こってしまったことは仕方がない…そう割り切るしかなかったのに…。
「…あ、れ…っ何で…涙、なんかっ」
今は、悲しみで感情が覆われていた。
静かに頰を伝う涙は堰き止め方を知らないように次から次へと流れる。
幸いだったのは周りに人がいないことだ。
男子高校生が1人でこんな道端で泣いていたら不審に思われるもんね。
一度その場に立ち止まり涙が落ち着くのを待つ。
…一体僕は何を期待してたんだろうな…母親のことは諦めていた筈なのに…。
自分の貪欲さに呆れて思わず自嘲的な笑みが浮かんだ。
…愛されたい、そう思っていたのかな?
自分でも分からない心の内の本心は何なんだろうか…?
深く深呼吸をしながら考えるが、その答えが見えてくることはなかった。
「…キョウ君…会いたいよっ」
ただ、今は彼に会いたい…その想いは確かなものだ。
でも、そこまでキョウ君に迷惑は掛けられない…だから、家を出た僕がいける場所は一つしかない。
涙は幾分か落ち着いたが、気持ちは今にも崩れ落ちそうだ。
でも、そこに行くためには自分を奮い立たせなければいけない。
「大丈夫、まだ大丈夫」
キョウ君と付き合う前はよく、自分を落ち着かせるために"大丈夫"と言い聞かせてた。
よしっ、と意気込み立ち止まっていた歩みを再び進めた…。
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