アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
153.
-
『…な、に言ってんの?』
「少しだけ…数日だけ僕に連絡しないでっ。そしたらいつもの僕に戻るから」
『待て!全然話が見えないからちゃんと説明しろ!』
「っごめんなさい、僕が弱いから…気持ちの整理をしたらちゃんと会うから!」
『っ薺!ま…っ』
キョウ君の言葉を最後まで聞かずに電話を切る。
それと同時に目から涙が溢れた。
泣く資格なんてない…キョウ君への罪悪感にも母親が言っていた言葉に傷付くことに対しても…。
もし今、キョウ君に会ってしまったら僕は必ず甘える。
甘えて現実逃避するだろう。
キョウ君に依存してることは否めないけど、自分の足で立てない依存はしたくない。
弱い僕には母親の言葉…母親が言った現実的な世間一般的な考えを受け入れるのに時間がかかってしまう。
ちゃんと、ちゃんとその言葉を受け入れてキョウ君の隣に立ちたい。
今の弱気な僕には、彼の隣に立つ資格はない。
ポロポロと流れる涙をゴシゴシと拭い、頰を2回叩いて気合を入れる。
そして、ミキさんが待つ店へと足を進めた…。
「…おっ、来たな。後少しで出来るから待ってろ」
店へと繋がるドアを開ければ、酒のおつまみを作る裏方…言わば、厨房でミキさんが何かを作っていた。
ほんのり香る甘い匂いにフライパンで何かを焼いている音。
簡易椅子を広げて座り、ボーと横からミキさんを眺める。
普段きっちりとした格好しか見たことないから、スエットと言うラフな姿は貴重だ。
「…ほい、完成。メープルは自分で好きなだけかけてな」
「うわぁ、美味しそう…」
皿に盛られたのは香ばしい匂いを漂わせたフレンチトーストだった。
お店に出してもおかしくない見た目に、沈んでいた気持ちが少しだけ上がった。
「いただきます」
手を合わせてそう言って、ナイフとフォークで食べ進める。
外はパリッとしてて中はトロトロ…まさに絶品だ。
「っ美味しい!ミキさんこれめっちゃ美味しいよ!」
「そこまで喜んで貰えると作った甲斐があるよ」
苦笑いを零しながら僕の頭をクシャクシャと撫でるミキさんは、自分も椅子に座り食べ出した。
野菜サラダとインスタントスープもあり、滅多に食べない朝食の種類だ。
全て食べ終わり作って貰った代わりに食器洗いを手伝う。
その間ミキさんはコーヒーを作っていた。
「…で、何かあったのか?」
洗い物が終わりもう一度椅子に座ると、僕の前にミルクたっぷりのコーヒーが入ったカップを置いた。
このまま何も言わずいられるとは思ってない。でも、詳しく話したくはない。
「…ミキさんは、家族から恨まれたことってありますか?」
「んーどうだろう…本心はどう思ってるか分かんねぇけど、俺がこう言う仕事してても口出しはしてこないな」
「そっかぁ…理解のある家族なんですね」
口元に笑みを浮かべて笑う。
…僕の母親とは大違いだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
154 / 233