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「…お前は紫波君のことを考えてもそう言えるのか?」
「っ……」
一番突っ込まれたくなかったことを言われて言葉に詰まる。
ミキさんが言いたいことは分かる…僕が言ってることは、キョウ君の想いを裏切っていることで…。
「あの日、少しの時間を一緒に過ごしたけど、彼は薺のことを心から大切にしていると思った。そんな人の気持ちを裏切れるのか?」
「っだって…っ」
分かってる、キョウ君が僕を大切にしてくれていることも、愛してくれていることも…身体で、心で感じている。
自分勝手な想いで突き進んだらいけないことだとも分かっているけど、僕の中に深く根付いた想いもそう簡単には無しに出来ない。
「っ、簡単なことじゃないんです!いつかはキョウ君に色々と話さなきゃって思ってるけど、怖いんですっ。呆れられるのが…軽蔑されるのが…っ」
「…軽蔑?」
「ごめんなさいっ、これ以上は言えませんっ」
このまま本音をぶちまけたら、知られてはいけないことも話してしまいそうになり、自分でストップをかける。
…どうしてこの類の話になると、我を見失ってしまうのだろう。
その所為で、キョウ君に一方的に会わないと言い。
自業自得なのに1人で傷付いて、泣いて…。
バカみたい。変わってきていると思っていたけど、実際何も変わってない。
人を信じることも、自分を見せることも…。
怖がって、本心なんて見せてやいない。
そう思うと、今まで貰っていたキョウ君の愛を受け取ることも戸惑ってしまう。
「…分かった、もう何も聞かないから泣くんじゃない」
眉間に皺を寄せて苦しそうな表情をするミキさんは、僕の目元を親指で撫でる。
その時、自分が泣いていることに気付いた。
「っふ、ごめっ、さいっ…酷いこと、言って、ごめんなさいっ、キョウ、君っ」
「…さっき、紫波君と電話したのか?」
「んっ、気持ちが、っ落ち着く、まで…ヒック、会えないっ」
「あーそれはダメだろ」
「ふぇっ、やっぱりっ…」
あの時、本当は電話をするべきじゃなかったんだ。もう少し、自分を落ち着かせていたら感情的にならなかったかもしれない。
今更そんなこと思っても遅い。まさに、後悔先に立たずだ。
本格的に嗚咽を零しながら泣き出す僕の頭を撫でて、「紫波君には昨日のことを言った方がいいな」と優しく諭された。
嫌われたくない想いと話したくない想い。どちらか取るともう片方は諦めるしかない。
今の僕には正しい判断が出来ない。
只々傷付けたことに対して、ごめんなさい、と言うことしか出来なくて…気持ちがグチャグチャになって整理することが出来ない。
「…今は泣きたいだけ泣け。泣いてスッキリさせてからまた考えればいい。お前は1人じゃないんだからな」
そして、ミキさんの言葉に縋るしかなかった…。
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