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…違う、そんな顔をさせたい訳じゃない。
話せるもんなら話したい…けど、自分で受け入れていないことを言葉にするのが嫌なんだ。
それでも…そんな僕でも受け入れてくれますか?
「…あの日、家に帰ったら兄と兄の恋人が家にいてね」
そう話を切り出すとテーブルに腰掛けていたキョウ君が、椅子に座り直して僕を膝の上に向き合うようにして座らせた。
ぐんと近くなった距離に心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うぐらい、バクバクと高鳴る。
一つ大きな深呼吸をして話を続ける。
「…そこまでは良かったんだけど…その後母親が帰って来て…」
「…お母さん?」
「うん、一緒に住んでいてもあまり顔を合わせる事はなくてね…まぁ、僕が会わないようにしてるんだけど」
フッと自嘲的な笑みが溢れた。
それを見たキョウ君が「そんな顔は薺に合わない」と頬を撫でながら言った。
自然とその手に擦り寄り目を瞑る。
暖かい温もりにホッとするのは依存している証拠だろう。
「…それで、母親と兄さんが言い合いをし出して…」
「…理由を聞いても?」
「母親は男同士の恋愛に否定的なんだ…つまり、兄さん達の恋愛について言い合いになったんだ」
母親が男同士の恋愛に否定的…その言葉に、キョウ君の表情が崩れた。
と言っても、一瞬変わっただけで直ぐに戻ったけど…引っかかったことには変わりないないだろう。
そこまで話して、最後まで話すことに躊躇する。僕が母親に嫌われていることは話してあるけど、その理由を話してはいない。
そして、それを話すかどうか…迷ってしまい顔を俯かせる。
けれど、そんな僕を救ってくれるのは彼の言葉で…。
「…薺、言っただろ?俺は薺が傷付いたなら癒したいし身体も心も守りたいって」
「っキョウ、君っ…っあ、ふぅ…っ」
「大丈夫。薺を嫌いになるとか離れていくとか絶対にないから」
どうしてこの人は僕が心の奥底で思っていることを言い当ててしまうんだろ…。
今その言葉を言うのはズルい…キョウ君に助けを求める僕もズルい。
目に浮かんだ涙は頰を伝いキョウ君のパンツに染みを残す。
よしよし、と頭を撫でられて涙がより一層溢れる。
もっとキョウ君に触れたくて肩に頭を置いた。
クスッと笑う声がしたが、今はボロボロになった心に温もりを与えたいからなにも言わないでおこう。
嗚咽を吐きながら静かに泣く僕に、何度も「大丈夫、落ち着くまで待つから焦らなくいいよ」と柔らかい声で囁かれた。
キョウ君の腕に抱かれながら僕は決める。
全部は言えないけど、真実だけを話そう。
…父親に襲われかけたことを…それが原因で母親に嫌われていることを…。
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