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父親が息子に手を出す…僕が3人兄弟だと知っている人なら、その中の誰かは瞬時に見破ることは出来ないだろう。
でも、この人はそれが分かった。
手を出された息子が……僕であると。
「…どこまで?」
「大丈夫…割と早く助け出されたから」
窓際にいると、セミの鳴く声が微かに聞こえる。
少し蒸し暑い教室で耳に入るのは、自分の鼓動とキョウ君の胸の高鳴りだけ。
額から流れ落ちるのは汗か冷や汗か…どちらか分からない。
「……もっと早く、出逢っていたら…」
「…えっ?」
「薺ともっと早く出逢っていたら、ここまで傷が深くなるのを止めることが出来たのに…っ」
ふんわりと首筋にキョウ君の髪が触れる。
そして、肩に顔を埋めて悔しそうにそう言った。
「辛かったね」でもなく「頑張ったね」でもなく…。
ただ、もっと早く出逢いたかった、と…。
同情することは誰だって出来るけれど、出逢ってもない日々を自分のことのように後悔する人にはなかなか出逢えない。
人はそれを「今更言っても仕方がない」で済ますだろうけど、キョウ君はただ真っ直ぐに、僕を想ってくれている。
さっきまでずっと泣いていたのに…この腕に抱かれると自然と涙が溢れ出る。
暖かくて…優しくて…安心する…誰にも渡したくないと願ってしまう。
「っどうして、そんな風に言ってくれるのっ…キョウ君の所為で涙腺が緩んじゃったよっ」
「いいよ、俺の所為で…だってそれは、安心しきってるからだろ?」
「うぅ、んっ…キョウ君の隣は暖かくて安心する…好きっ、大好きだから離れたくないって思っちゃうっ」
「それでいいんだよ…手放す気はないって言ってるんだから、俺に囚われな」
そう言って、 抱き締めていた腕を離したと思ったら片手で目元を覆い被せられた。
何事?と思った次の瞬間、グイッと目元を押されてキスをされた。
いくら2階だと言っても窓際に立てば下から見られる訳で…。
でも、抗う理由がないし心の底ではキョウ君に触れたいと思っているからこのままで。
触れるだけの口付けが離れていき目元を覆っていた手も外される。
上を向いている僕と僕を見下ろすキョウ君の目が合った。
その瞳を見た瞬間、堪らず身体の向きを変えてその胸に飛び込んだ。
「もうっ、キョウ君カッコ良すぎ!」
「ふふっ、ナズにそう言われると嬉しいな…」
「…こんな僕でも嫌いにならない?」
「なるわけないでしょ?寧ろ、もっと甘やかしたくなったよ…それに、ナズの全部を手に入れてその傷を一緒に背負っていきたい」
額にリップ音を鳴らしながらキスを落とし視線が合うと、もう一度甘いキスが唇に降ってきた。
何故そうなったのか…その後どうなったのか…詳しいことを話すまでは無理だけど、この事実は話せて良かったと心底思う。
だって、僕は1人じゃないのだと…一緒に頑張ってくれる人がいるのだと、実感出来たから…。
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