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……肝を冷やすって、こう言う状況を言うんだと思った。
目の前にいる人にキョウ君との関係は一言も話していないのに…何故勘付かれてしまったのだろう?
その時、ふと思い出してしまった。
母親に男同士の恋愛はおかしいと…気持ち悪いと言われたことを。
「……っ」
「…ナズ?」
同じ母親だ…自分の息子が男と付き合っていると知ったら許せないに決まっている…。
また心許ない言葉を浴びせられると思うと、恐怖で身体が硬直する。
そんな僕の様子に声を掛けてくれたキョウ君にも応えることが出来なかった。
「…母さんがそんな風に聞いたから、薺が怖がってるよ」
「え?…ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったんだけど…」
けれど、僕が思っているよりも場の雰囲気は悪くなくて…どう言うことか良く分からなくてキョウ君を見上げる。
それに気付いたキョウ君がふんわりと笑いながら頭を撫でてきた。
「…ナズ、実はね知ってるんだよ」
「…何を?」
「俺とナズの関係を…家族の皆が」
全く悪びれもなく笑いながら言われて、今度は別の意味で固まった。
…知っている?僕とキョウ君が恋人だと…?
それなのに、嫌悪感漂わせる表情も心無い言葉も言わないと言うことは…。
「…反対、されてないの?」
その答えしか導けれないと言うことで。
まさかな展開に拍子抜けして足から崩れていった。
隣にいたキョウ君は驚いたように座り込んだ僕の肩を抱き寄せる。
「っ、どうして…何も言わないんですかっ?」
「それは男同士だからと言うこと?そんなの本人達の問題であって私達には関係ないわ。それに、恋愛に性別は関係ないと私は思っているから」
お母さんはソファから立ち上がると、力が抜けて上手く立ち上がれない僕の前に同じように座り込んだ。
そして、ポンポンと頭を撫でた。
ハッと思いお母さんと視線を絡めると、綺麗な顔がふんわりと微笑みに変わった。
「…貴方は、桔梗のことが好き?」
その優しい口調で言われた言葉に、秒で返す。
「っ好きです。大好きだから、僕からキョウ君を離さないでくださいっ」
懇願するように、祈るように…泣きそうなのを我慢して震える声で言った。
抱き寄せられている肩に力が入ったことを感じて、肩に置かれている手に自分のを重ねる。
やっと自分の気持ちを言える…離れたくないと、口にすることが出来なかった言葉が。
すると、頭を撫でていた手が背中に回り抱き締められた。
「…大丈夫、私達は貴方達の味方よ。だから、桔梗のことお願いね?」
「…っ、はぃ…ありがとう、ごさいますっ」
そっとお母さんの背中に手を回して抱き締め返す。
…暖かいな…こんな風に"母親"と言う存在に抱き締められるのはいつ振りだろうか…。
その暖かさは、僕が忘れていた母親の温もりを思い出させてくれるものだった。
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