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「…あ、来た来た…薺、早く座りなよ」
「お待たせしました」
リビングのドアを開けるとダイニングテーブルには既に皆座っていて、僕が来るのを待っていた。
慣れと言うのは怖いもので、これから兄弟の関係をいいものに変えていくと決めても、自分を守る為に身に付けた敬語は簡単には外れない。
このままじゃダメだな…と思い、自分の席に座る。
いつもは隣に柊君がいるが、今日はキョウ君が隣にいて柊君は誕生日席になっている。
「…どうかした、ナズ?」
「えっ、何でもないよ?」
「…無理しないでね」
僕の憂鬱さを見破るキョウ君に頭を撫でられると、負の感情が払拭される気持ちになる。
いつも通り撫でられると嬉しくて笑みが零れた。
すると、物音一つ立たなくなり何だろう…と思い周りを見ると3人が僕をジッと見ていた。
えっ、この視線は何?訳が分からなくて瞬きをするしかない。
「…色々と聞きたい…けど、まずはご飯にしよう」
何処か落ち着きがなくウズウズしている風に伺える兄さんに、他2人もうんうんと頷いて肯定する。
この時僕は、キョウ君の前での態度と家族の前での態度の違いがあったことをすっかり忘れていた。
僕は首を傾げるのに対してキョウ君は「…なるほどね」と呟くように言う。
よく分からない空気だけど、兄さんが言ったように話はご飯食べ終わってからでいいと思い、手を合わせて「いただきます」をする。
そしてそれに倣うように、4人も「いただきます」をして食べ始めた。
今日は時間があったからか、唐揚げがメインにスープや和え物、サラダと言った料理に豪華だな…と思う。
「…ん、棗さんこの唐揚げ美味しいです!」
「本当?良かった。家は昔からこの唐揚げで育ったからね…薺も作れるからいつでも作って貰って」
「で、でも!兄さんの方が美味しく出来るからあまり期待は…」
「ふふっ、ナズが作ってくれるならどんなのでも美味しいだろうね」
「っキョウ君!」
無駄に期待はしないでと言ったのにハードルを上げてくる辺り意地悪だ。
料理は出来ないことないし周りの男子高校生に比べたら出来る方だと思っているけど。
「…てか、桔梗、お前"キョウ君"って呼ばれてんの?ククッ」
「…悪い?因みにナズにしか呼ばせてないから間違っても呼ばないでよ。てか、呼ぶな」
「へいへい、お前も大概器の小さい男だな。まっ、俺も人のこと言えねぇけど」
不敵な笑みを浮かべた蓮さんがチラッと兄さんを横目で見る。
その視線に気付いていると思うけど、敢えて見ないのは照れているからだろうか?
こんなに楽しいと思える団欒に自然と笑みが溢れる。もう、何年も感じなかった兄弟との時間が作れたのは、紛れもなくキョウ君の存在があるからだ。
「…兄さん達、ここにまだ初な中学生がいるんだから程々にお願いします」
ずっと黙っていた柊君の言葉に、僕達は顔を見合わせて笑い合った。
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