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僕の楽しみ2
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・・・可愛いなぁ、って何言ってんだろう。内心、自分の心の声に苦笑を零した。
「ちょっと待っててくださいね。」
裏へ下がると、ケーキを保管する冷蔵庫へ向かう。そこから、先ほど取っておいたイチゴのショートケーキを二つ取り出す。そして、カウンターへ戻ると、それを見た彼が少しホッとしたような表情を浮かべた。
すると、『カランカランッ』と再度ドアベルが鳴る。どうやら、毎朝挨拶をしてくれる女の子がお母さんを連れてきてくれたようだ。女の子は僕を見て嬉しそうな笑みを浮かべた。
「こんにちは!ケーキのお兄ちゃん!」
朝も元気だが、今も変わらない元気な挨拶をしてくれたことにこちらも嬉しくなり、笑顔を返した。
「こんにちは、今日はケーキを買いに来てくれたのかな?」
女の子へ話しかけては笑みを浮かべたまま、母親らしき女性へぺこりと会釈しては彼女も小さく笑みを浮かべながら会釈を返してくれた。
「うん!お母さんとイチゴの乗ったケーキ買いに来たの!」
・・・イチゴのケーキか。困ったな、イチゴのショートケーキは新堂さんんの分でなくなってしまうし、でもまぁ、ケーキを選んでもらってそれにイチゴを乗せてもいいかもしれないな、なんて思いながら女の子へ声をかけようとした、その時。
「・・・あの。やっぱり、今日は、1つで大丈夫、です・・・。」
・・・新堂さんがしゃべった!!そのことに心臓がバクバクと苦しいぐらいに鳴っている。その胸の高鳴りを落ちつけようと小さく息を吐きながら彼へ向きを変えると彼はチラチラと女の子の方を見ていた。どうやら、女の子の発言で1つ譲ろうとしているようだった。お母さんの方はそれに気づいたらしい。
「大丈夫ですよ。ね、ミカ。他のイチゴが乗ってるケーキでも大丈夫よね?」
「えーっ、ミカ、イチゴのショートケーキがいいっ!!」
女の子・・・ミカちゃんはどうやらイチゴのショートケーキと決めていたらしく駄々をこねる様にお母さんへ強く言った。
そんなミカちゃんを見た彼は小さく笑った様に見えた。そして、キャッシュトレーに1000円を置き、「1つで。」と人差し指で1と表しながら言った。・・・僕はそんな彼の優しさに惚れ直していた。
「・・・あ。は、はい!1000円お預かりします。・・・お返しが590円となります、お確かめください。」
僕は1テンポ遅れながら会計を済ませると、箱詰めの作業へと移った。そして、いつもの様に作業をしているとケーキを入れる際に1つ用ではなく、2つ以上用の箱を用意していたことに気付いた。やり直そうとしたが、良いことを思いつき、裏へ下がろうと彼へ「すみません、少々お待ちいただけますか?」と声を掛けた。
「・・・大丈夫です。」
彼はコクリと頷きながらケーキのショーケースを見つめている。・・・さっきの様にチラリとでも良いから僕の事見てくれないかな、なんて考えつつ、箱詰め途中の物も持って裏へ向かう。
良いことというのは新作で出そうと思っているイチゴを使ったババロアを食べてもらって感想を貰おうと思ったのである。
冷蔵庫から試作品を取り出し、箱詰めしてはメモ書きで『もし良かったら感想聞かせてください。新作で出そうと思ってます 星野』と簡単に書いて中に入れた。・・・彼は感想をくれるだろうか?と少しワクワクしながら保冷材も入れてカウンターへ戻り、彼へ渡す。
「上からすみません。いつもありがとうございます。」
いつも通りの挨拶を済ませ、彼を笑顔で見送ろうと彼を見ると、何故か彼は再度キャッシュトレーへ410円置いていた。
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