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【恋人にリンゴを】kiss me more!
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静かな部屋にコチコチと時計の音が響く。悟はガウンを羽織り、ミルクティーの入ったティーカップを持って冷える手を温めていた。
ミルクをいつもより多めに使って作ったミルクティー。ほのかに香る甘い匂いに誘われつつ、一口飲み干す。すると、身体の中がじんわりと温かくなってきて。ついついほうっと一息ついてしまった。
しかし、悟は時計を見て眉を下げる。実はレナードの帰りを待っていたのだが、遅くなっているようだ。朝方、今夜は会合だと面倒くさそうにしていたから、まだ酒の席に付き合っているのだろう。
仕方ないとは思う。それなのに、寒さを感じると寂しい気がして。今日は一段と冷えているから、寒くないかな、風邪引いてないかな、なんて心配にもなってくる。
「レナード様、はやく帰ってこないかな……」
無意識に心の声が漏れていた。
ハッと気づけば誰もいないのに恥ずかしくなって、悟はガウンを引き寄せてくるまり、自分自身を抱き締める。なにを子供みたいなことを言っているのだろう。そして、時計を再び見れば2、3分ほどしか時間が経過していなくて溜め息をついた。
この気持ちを紛らわそうと、この間、図書館で借りてきた本を読もうとして席を立てば、玄関のほうから物音がして。その途端に舞い上がってしまうのだから、どうしようもない。悟は小走りに玄関へ向かった。
レナードの姿が見えて、ほっと安心感が募る。お酒の臭いが気になるところだが、今の悟にとってはどうでもいいことで、レナードの元へ少しでも早く駆け寄った。
「おかえりなさいませ……!」
「ただいま」
「わっ」
すると、そのままレナードに腕を掴まれて胸へ飛び込む。
寒い外から帰ってきたレナードは冷たい。その温度差に悟の身体はビクッと跳ね上がったが、強く抱き締められて悟もレナードの背に腕を回した。
「ああ……サトルはあったかいな……」
「レナード様はひんやりしてます。外、寒かったでしょう」
「寒いよ。車から降りて家までの距離でこんなに冷えるんだからな。温めてくれ、サトル」
そう言われると、悟の身体がひょいっと簡単に宙に浮いて。急な姫抱きに悟が慌てているうちに、ソファーへ身を預けることになった。
それから、すぐさま降ってくるレナードの唇。ここまでくると、洋酒の香りがきつくなってクラクラした。
レナードは何度か悟の唇を啄んだあと、あっさりと唇を離して自らの唇を舐めとる。
「……甘い」
「それはミルクティーを飲んでいたからですね。レナード様は……少し酔ってますか?」
「いつもより飲みすぎたかもな」
そういう自覚があるということは、まだ大丈夫のようだ。けど、とにかく悟に絡みたいようで、逃げられないように悟を覆いかぶさっては再び口づけを求めてくる。
温めて、と言われたのに、この体勢。これだと温まるのは悟で、レナードは冷えるばかりではないかと悟は考えた。
「待って。これではレナード様を温められません」
レナードの胸板を押し返すと、意外にも離れてくれて。その分、上体を起こしたレナードは眉を寄せて不機嫌そうだが。
一方で、悟はレナードを立たせて、着ているコートとジャケットを脱がせるとソファーへかけた。それで察したレナードは不機嫌そうな表情が和らいで、今度は意地悪くニヤニヤと笑う。
「積極的」
「……違いますから」
レナードの持つ考えはさっさと否定して。
悟は再びソファーに座ったレナードの膝の上へ向かい合うように乗った。そして、肩にかけていたガウンを持つと、そのままレナードへ腕を回した。
悟の体温の残るガウンが二人の身体を包む。少しでも近くにと悟が身を寄せれば、腰にレナードの腕が回ってきて、ぴったりとくっついた。別の鼓動を感じ、胸が高鳴る。
「温かいですか?」
「まだだ。唇が寂しい」
悟は思わず笑ってしまう。それで、はいはいとレナードへキスをした。
もしかして、レナードがもっと酔うとキス魔になってしまうのかな。そんなことを考えながら、甘い口づけを繰り返す。レナードが酔っているからか、啄み方とか吐息とかいつもより大胆な気がした。他にも酔いが移ってしまいそうだったり、フェロモンを強く感じたりとレナードからの誘惑は大きくて。
まだ深く口づけてないのに、腰が砕けそうになって悟は泣きそうになる。レナードより自分のほうが熱くなってしまっている。
「もっと」
「くち、溶けちゃいます……」
「それは困るな」
とか言いつつも、唇は重なった。今度は深く口腔を丁寧に愛撫される。気持ちよすぎて唇が離れる頃には悟の顔がとろんとしていて、レナードの身体に縋っていた。
そして、安心しきった悟はレナードの肩を枕にうとうととしている。
「眠いか?」
「すみませ……そういう、つもりでは……」
急に襲ってきた眠気。せっかくレナードが帰ってきたのに。レナードがいると思えば思うほど、安心して眠気は強くなった。
「構わない。待ってくれていて嬉しかった。ゆっくりおやすみ」
それはなにかの呪文のようで。悟はゆっくりとまぶたを閉じて、夢の中へと旅立つ。
あとから聞こえてきた穏やかな悟の寝息に、レナードは微笑んだ。
本当は早く帰って悟に構ってやりたい。でも、そうはいかなくて。今日はまさか待ってくれているとは思っていなかった。レナードにとっても、悟のおかえりなさいは心を安らげてくれるものだ。帰る場所に愛しい人がいるだけで、その日の疲れなんて忘れてしまう。
「よい夢を……」
レナードは悟に向かって静かに言う。
そして、悟を強く抱き締め直すと、より温かさが伝わってきたような気がした。
End
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