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【金と黒】幼馴染と恋仲
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明はなぜかキスをするのを嫌がる。最初は受け入れてくれても「長い」と胸を押されたり、酷い時には「そういうことしなくていい」と拒絶されたりする。
本人いわく、恥ずかしいだとかなんだとか。健人からすれば、セックスする時には自ら脚を開く人が、なにを言っているんだという話である。恋愛の経験値と雲泥の差があるため、明に突っ込むことはないけれども、これは百歩譲ってのことだ。
健人が帰宅すると、早番であった明はすでに帰ってきていた。
付き合ってからは、どちらかの家に入り浸ることが多くなっている。健人は同棲してしまえばいいと思うようになってきたが、明がどう思うか。まず部屋を探すのにも苦労しそうだが、同棲をすれば周りにバレてしまう。人それぞれだとしても、明のほうは職場にバレたくないのではと勝手に思っていて、同棲しようと簡単に言い出せなかった。そもそも付き合いたてで、考えるのが早い気もする。
そんなことを考えている中、健人が部屋に入ると、寛いでた明が「おかえり」と声を掛ける。何気ないことだが、いつも以上にグッと来た健人は、さっそくただいまのチュー攻撃で明を襲った。これは明の苦手な甘いキスのほうで、案の定、明からはストップがかかる。
「ん……、キスはもう終わりっ」
「もう少しさせて」
「それ何度目?」
しかし、その壁を何度も壊して口づけを続ければ、流石に呆れた声が聞こえてきた。健人がやりすぎたせいもあって明の唇は手の甲で隠され、厳戒態勢をとられる。
「健人ってキス魔だったっけ? 最近、キスするの多いよね」
「そりゃあ付き合ってるし?」
「だとしても……帰ってきて早々こんなにキスする……?」
「おー、するする」
「嘘。テキトーなこと教えないでよ」
明はふいっと顔を背ける。
拒否されるのは嫌いだ。イライラする時だってある。しかし、それは前までのこと。
一見、怒っているような明だが、よく見てみると耳が赤い。そして、その耳には記念に買った色違いのピアスがつけられている。健人が見る限り、明はずっとピアスをつけている様子だ。きっと禁止されている職場の時だけ外しているのだろう。
態度には出ていないが探して見つけると、ちゃんと好きでいてくれてるんだなとしみじみ感じる。そこが明の可愛いところだと健人は思っている。可愛い……のだが、口づけを拒まれ続けるのは致命的だし、わかってはいるけど、それでも明から好きと言われたら堪らない。
(どうすっかなー……)
「……というわけで、押して駄目なら引いてみろってやつだよなー」
「ああ、そう……」
一晩考えたみた作戦を提示して、どうでもよさそうな返事をしたのは祐馬だ。休憩に入る際、ちょうど祐馬が営業でモール館内に来ていたらしく、一緒に昼をとっている。
ちなみにこの作戦についてだが、実はすでに始まっていて。
──明は夜勤だっけ。んじゃあ……会えるのは早くて明日の夜?
──うん。
──そっかー。寂しい?
──なに、突然。健人が、でしょ。
──はは、そうかもしんねー。じゃ、行ってくるわ。
──えっ……うん。行ってらっしゃい。
今朝、行ってきますのキスをしなかったところ、一瞬のことだが明は戸惑っていた。あれ、キスしないんだ、という顔だった。今のところ、計画通りの反応である。むしろ案外可愛い反応を見せてくれて、健人の気分は上々だ。このまま明がキスをしたい気持ちになってくれれば成功なのだが。
ニヤニヤする気持ちを抑え、昼食のラーメンをすすっていると、祐馬がジト目で見てくる。
「で、なんで俺に言うわけ? 嫌味なの?」
「ええー、自慢? 逆の立場になってみて、どう?」
「うっざ」
残念ながら、ニヤニヤは抑えられなかったようだ。
祐馬に明のことを話すと、優越感が募る。明を独占しているような、そういう感覚だ。それは以前まで祐馬のほうが明のことを話すことが多かったからだ。そして、へえ、ふーん、と聞く中でモヤッとしていたのは、自慢話にではなく、知らない明のことを聞かされていたから。それにようやく気づけたのは最近のこと。
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