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叱咤する両手
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傷ついた瞳で上倉を見詰める俺。
でも、違う。
…傷ついているのは上倉で。
傷つけたのは、紛れもなく、俺…なんだ。
上倉は、黙って見詰める俺をぎゅっと抱き締めた。
「本当、ごめん……」
声に俺は、思わず、上倉の胸元を両手で押しやった。
穢い。俺……、汚いんだよ。
俺を包んでいた上倉の腕が、離れていく。
「なんで、…なんでお前が謝るんだよっ」
悪いコトをしたのは俺で。
上倉は、何もしていないのに。
上倉のコト、疑ってこの関係を壊したのは、俺……。
「浮気したのは…、俺だ」
俯いたままに発した俺の声は、か細く震えた。
「浮気? ……気持ちが俺から離れたの?」
上倉の言葉に、俺は、少しも動けない。
「いや最初からないんだから、浮気もくそもねぇだろ」
ははっと軽快に笑う上倉の声に、俺は、歪んだ顔を上げた。
「好きだよ。気持ちは、ブレてないっ」
言い切った俺の言葉に、上倉の驚いた顔が重なった。
ぶわっと頬が赤く染まった上倉に、罪悪感が胸に広がる。
「でも、他の奴と…、他の奴に跨って、腰振って、……っ…汚ねぇんだよ、俺」
抱き締めようと伸ばされる上倉の腕から逃れる。
そのまましゃがみ込んだ俺は、両手で顔を覆った。
早まって、シてしまったあの過去を消したい。
過去になど、戻れない。
戻れないなら、俺ごと消してしまいたい。
「自分のコト、殴ってやりたい。……居なくなりたい」
顔を覆う手を剥がされる。
俯く俺の両頬を、しゃがみ込んだ上倉の大きな手が包む。
上げさせられた俺の顔は、苦痛に歪む。
上倉の手が瞬間的に離れ、ぱしんっと両の頬を叩かれた。
「そんなこと言うな。……お前が居ない世界なんて、俺は嫌だ」
むっとした顔をした上倉は、自分で叩いた俺の頬をするすると撫ぜる。
「お前が寂しがり屋だって知ってて放ったらかした俺が悪んだよ。…ごめんな」
困り顔で微笑む上倉に、どうしていいか…わからなくなる。
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