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片影 Ⅲ
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「俺 助手席に座っても良い⁇」
いつもの調子で 後部座席のドアを開こうとすると
それを遮る様に蓮様にそう告げられた
「…はい…勿論 構いませんが…」
「…ありがと」
小さな声でそう呟くと 蓮様は自分でドアを開け
そのまま助手席に乗り込んでしまった
行き場の無くなってしまった手を引っ込めると
運転席の方に回り いつも通りシートベルトを締めた
「佐倉は あの二人の事どう思ってるの⁇」
少し走り出した時だった
蓮様にそんな質問をされて
前を向いたまま 何度か瞬きを繰り返した
「…佑吾様と創様の事ですか⁇」
「そう」
正直 この質問には かなりドキッとしたし
どういう主旨で蓮様が訊いてきたのかが分からなくて
一瞬答えに詰まってしまった
「どう…お似合いだと思いますよ⁇
佑吾様がお選びになった方ですし
実際 すごく可愛らしい方じゃないですか」
「まぁ そうなんだけど…」
「蓮様は 何か思うところがあるんですか⁇」
「別に…上手くいって欲しいと思ってる」
「そうですか…」
そう思っているならば
自分の意見を聞く必要があったのだろうか…⁇
蓮様は また黙ってしまい
イマイチ何を考えているのか分からなかった
そして 微妙な沈黙が 若干気まずい…
「あ そういえば
春から私 創様の送り迎えをする事になったので
もしかしたら お会いする機会が増えるかもしれません」
「え⁇」
この空気を打破したくてそう切り出すと
蓮様が少しだけ自分の方に寄ったのが分かった
普段横に人を乗せる事が少ない為 若干戸惑いがある
「でも 佐倉大変じゃない⁇」
「いえ 敬聖学園は佑吾様達のマンションと会社の丁度間位ですし
その分のお給料もきちんと頂けますので 問題ございません」
「そう…なんだ…
じゃあ佐倉 4月から 毎日うちの学校来るんだ…」
「はい」
「ふ〜ん…」
そんな相槌の少し後 微かに鼻歌が聞こえてきた
珍しいなと思い 丁度信号にも捕まった為
こっそり横目で蓮様の様子を盗み見たが
窓の方を向いていた為 表情は分からなかった
いつもあまり表情が変わらない蓮様の 違った顔が見れるかもと思っただけに
少しだけ残念に感じた
佑吾様は 何を考えているのか比較的分かりやすい方で
少し心配になる程だが 対照的に弟の蓮様は
昔から喜怒哀楽が分かりにくいという印象があった
見た目がそっくりなだけに
お二人に接していると 言葉では上手く言い表せない
何とも不思議な気持ちになっていった
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