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父親
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物心ついた時には 父と二人きりだった
所謂種の方の親は居なくて 父もそれに触れる事は無く
子供心に訊いてはいけない事だと思っていた
憶測の域を出ないが
父は相手に 番になってもらえなかったのだ
それでも 自分の事を 一生懸命育ててくれたし
いつも笑顔で 優しい父が大好きだった
そして 10歳の性別判定の時
自分に下された結果に 父は泣いていた
それからは必要な教養をつけようと塾にも行かせてくれて
おかげで成績は 常にトップクラスにいる事が出来た
片親な上に Ω性の父だったが
特に生活において 我慢を強いられる事はなかった
それはとても有難い反面 何の仕事をしているのかだけが
ずっと気になっていた
スーツを着ている所は見た事が無く
帰宅が深夜になる事もあって
普通の仕事でない事だけは 理解していた
中学に上がって少し経った頃
学校から帰宅している途中で 父の姿を目撃した
道路の向こう側にいる父は自分には気付いていない様子で
咄嗟に後をつけてしまった
電車で都内まで来ると 繁華街の方に歩いていく
特質な雰囲気の街に 嫌な予感しかしなかった
父があるホテルの前で止まり携帯を開いて電話をかけると
スーツの男が父に近付き肩を抱いてその中に入って行った
ショックで頭が真っ白になったが これだけは分かった
父は 売春夫だったのだ
Ωの雇用は 少しずつ改善されているとはいえ
未だに根強い差別が絶えない
父にとって 自分と生きていく上では
これしか選択肢が無かったのかもしれない
それでも 言い表せない嫌悪感と喪失感に襲われて
足がガクガクした
そこからは どうやって家に帰ったのか 覚えていない
気がつくと 自分のベッドの上で泣いていた
どれ位時間が過ぎた頃だったか
風呂に入ろうと脱衣所に入り
鏡に映った自分の姿に 強烈な吐き気が襲って来て
トイレに駆け込んだ
自分の見た目は 父と瓜二つで
先程の事を思い出すと 涙と嗚咽が止まらなかった
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