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恩義 Ⅱ
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どうしよう…
抜けて良いタイミングが分からない…
「やはり 桃坂さんの所にお願いして良かったですよ」
「ありがとうございます」
社長と向こうの人は かなり盛り上がっている
俺も何とか笑顔を張り付けてお酌を続けるが
飲んだアルコール以外の体の熱に
手元が狂いそうになっていた
「…佐倉君 ちょっと ここに電話して来てくれないか⁇」
「え…⁇」
社長に手渡されたメモには
『少し休んできなさい』と書いてあった
俺はその紙をギュッと握りしめると頭を下げて廊下に出た
そのままトイレに向かい
スーツの内ポケットに手を入れて ハッとなった
自分の持つこの抑制剤はアルコールとの摂取は厳禁の物だ
今まで ろくな人付き合いもせず そういう場は避けたり
飲まずに適当にやり過ごしていた自分に
まさかこんな機会が訪れるとは思ってもいなかった為
その事に気付いた瞬間 頭の中がパニックになった
どうしよう…どうしよう…どうしよう…
戻らなきゃという思いとは裏腹に
体が敏感になっていくのが分かる
震える手で ベルトに手をかけた時だった
自分の入っている個室がノックされ
αに嗅ぎつけられたのかと思い 恐くて涙が溢れた
「…あ…あ」
体が小刻みに震え始めると 外から柔らかい声が響いた
「佐倉君 大丈夫か⁇」
「…しゃ 社長⁇」
「ああ 一度 ココを開けてくれないか⁇」
社長もαだ
開けたらどうなるか 容易く想像出来るのに
優しい声色に スライド式の鍵を横にズラしていた
「…発情期だね」
開けた先の社長は 顔色一つ変えず 自分を見ていた
襲われない事への疑問よりも
これで自分はクビになるんだと思うと
涙が溢れて止まらなかった
「…も」
申し訳ございません
そう謝罪しようとした言葉を遮って
社長は胸ポケットから 薬を取り出し 自分に渡してくれた
「飲みなさい アルコール後でも問題の無い物だ」
「…え⁇」
「早く」
「…は はい」
自分が飲み込んだのを確認すると
社長は にこりと微笑んでくれた
「体が落ち着いたら 戻ってきなさい」
「…はい」
数分後 体の火照りも取れ席に戻ると
何事も無かったかの様に宴会は続いていた
取り敢えずまた笑顔で社長の横に座ったが
内ポケットに入っていた物の事を考えると
さっきとは違う笑顔になってしまった様な気がした
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