アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
慕情 Ⅲ〜side蓮〜
-
久し振りに佐倉と沢山話せて すごく緊張した
今でも心がフワフワして落ち着かない
自室に戻り 何となく窓の外を見ると
まだ佐倉の車が停まっている事に気が付いて
咄嗟に窓を開けた
が 次の瞬間には走り出してしまい 窓枠をグッと握った
「…佐倉」
冷たい空気が頬を掠めて 何とも言い難い気持ちになった
次に会えるのは また一カ月は先になるんだろう
それでも 兄さんが家を出てしまってからの会えなさに比べれば
格段にマシではあるが
「…はぁ」
深い溜息を吐き出すと 窓を閉めてベッドに沈み込んだ
目を閉じると 初めて会った日の佐倉の笑顔が浮かぶ
『初めまして 蓮様 佐倉 真也です』
あの綺麗な笑顔と柔らかな雰囲気に 一目惚れ
でも最初は βの男の人に こんな気持ちを抱くなんてと
ずっと悩んでいた
それでも 会う度に どうしようもなく惹かれていくのを
止める事なんて 自分では出来なかった
中等部に上がって 2年が経とうとした頃
父さんの書斎に 借りた本を戻しに行った時
机の上に積まれた書類の山の中に 佐倉の写真が見えた
今よりも大分幼い顔つきに好奇心が抑えきれず
その書類をそっと引き抜き 広げた瞬間
ドクンッと心臓の跳ねる音が 確かに自分の耳に聞こえた
「…え⁇」
どうやら履歴書らしきその書類の性別欄には
βと書かれた所に 二重線が引かれ
直ぐ上にΩと書いてあったのだ
夢を見ているのかと自分の頬を強く引っ張るも
しっかり痛くて 尚のこと興奮が抑えきれなかった
その書類を元の場所に戻すと
部屋に戻り 冷静になる様 自分に言い聞かせたが
ドキドキと煩過ぎて それはかなり難しかった
「…佐倉…Ωなんだ…」
きっと コレが 運命なんだと そう思った
しかしそんな矢先 とあるパーティーに出席し
佐倉を発見して声を掛けようと思ったが
いつもとは全く違う 切なそうなその表情に
無意識にその視線を辿っていた
その先には兄さんが居て
ショックと同時に 何故か納得も出来る自分がいた
昔から 兄さんを悪く言う人には出会った事が無かったし
俺だって慕っている
ずっと一緒にいれば それはそうなるよね
そんな自嘲の笑みを浮かべながら 佐倉に歩み寄った
佐倉は俺に気が付くといつもと同じ和かな表情に変わって
何故か胸の奥が 痛くなった
佐倉の気持ちに気が付いてからというもの
兄さんは 佐倉の性別の事を知っているのか気になり
二人で食事をしている時に
「佐倉って βなのにすごく優秀だよね」
と切り出してみた
兄さんは俺の言葉に頷くと
佐倉が如何に凄いか語ってくれて
その様子を見る限りでは
本当に何も知らない様に見えて安心した
兄さんは嘘がつけるタイプの人では無いし
それに 佐倉が兄さんの事を好きなら
俺にも少しは チャンスがあるかなって思った
だって 兄さんと俺は 容姿がとても似ているから
だから この顔が武器になるんじゃないかって
そんな事ばかり考えていた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
178 / 365