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率爾 Ⅲ〜side蓮〜
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「…佑吾様」
嫌じゃなかったのかと訊かれれば 正直すごく嫌だった
でも 卑怯な事をしたという自覚はあったし
やっと佐倉をこの腕の中に抱けたという
満足感の方が高かった
それでも兄さんの名前を呼ばれた時は
腕に力がこもってしまったとは思うけど…
「…佐倉」
少しだけ身体を離すと あの佐倉が泣いていた
分かってはいたけど
そんなに兄さんの事が恋しいのかと思うと
俺も涙が出そうになった
「…好きだよ」
指で涙を掬い上げると 形の良い唇に自分のを重ねた
初めて交わしたその味は 涙が染み込んでいて
少しだけ塩辛かった
「…あ」
佐倉は目を丸くさせながら 自分の指で唇に触れていて
意外な程初々しいその反応に 正直ムラッときて
口の前にあった手を取ると
少し開いていた所に 自分の舌を差し込んだ
「ふう⁉︎」
耳まで真っ赤にして震える佐倉に 何だか感動した
兄さんも見た事無いであろうその表情に
若干の優越感を覚える
しかし 外を対向車が通った瞬間 ハッとなったのか
肩を何度も叩かれて 仕方なく口を離した
「…れ…蓮様…人が…」
「…うん…ごめん 急に…
でも キスした事は謝らないから」
「………」
眼鏡が無いだけで 佐倉は少し幼く見えた
明らかに困惑した表情を浮かべる佐倉に
考える隙を与えない様 言葉を選びながら
また狡い問い掛けをした
「今直ぐ どうこうしなくても良いから…
たまにこんな風に二人で会いたい……ダメ⁇」
「…だ…ダメという事は……ない…です…が…」
佐倉からその台詞を引き出すと やっと少しホッと出来て
自分の体を助手席に戻した
「良かった…じゃあ また連絡する」
「…はい」
車から降り手を振ると佐倉は放心した様な顔で頭を下げた
運転大丈夫かな…
車が見えなくなるまで見送ると
佐倉へのメールを打ちながら 家の門を潜った
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