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阿鼻叫喚 Ⅴ〜side榎戸〜
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昨日の一件で 創に拒否されたのかと思い
かなりショックを受けたが
その後の桃坂先輩が発した台詞の意味が分からず
その背中を 只ジッと見つめた
創は 先輩が離れようとすると
必死でその服に手を伸ばして しがみついている
「や‼︎ 佑吾 行かないで‼︎」
「大丈夫 ずっと側にいるよ」
優しい声色の桃坂先輩は かなり新鮮だったが
創の呼び方に さっきの先輩の言葉の意味が
やっと理解出来た
「創 少し眠ったら⁇ ちゃんと此処にいるから」
「…ほん…と…⁇」
「本当だよ」
桃坂先輩は 小さい子を寝かしつけるかの様に
布団をポンポンと叩いている
創から寝息が聞こえてくると ジャージを脱ぎ
それを抱かせてやっていた
創は眠りながらも 一生懸命それに頬ずりしていて
その動作が めちゃくちゃ可愛かった
「よし 行くぞ」
「何処にですか⁇」
俺の問い掛けに 先輩はまた眉間に皺を寄せている
「授業に決まってるだろ
サボリなんて許すと思ってるのか」
「サボリなんかじゃありません
本当に体調悪いんで
ちょっと寝かせてもらおうと思ったんです」
まぁ 嘘だけど
昨日家に帰ってからも ずっと悶々と考えてしまい
ただ寝不足なだけだっだ
俺の言葉に 桃坂先輩は疑ぐり深い目を向けてきて
誤魔化す様に ヘラッと笑った
「もし創が目を覚ましてパニックになったら
先輩に 直ぐ知らせに行きますから」
「…それ以外で 創に関わる事は許さないからな」
「は〜い」
ちゃんと返事をしたのに
桃坂先輩の怪訝そうな顔付きは変わらなかった
正直 昨日の佑吾さんとの対面もあったし
違うとは分かっていても
よく似た面立ちの先輩にそういう目で見られると
何とも言えない複雑な気持ちになった
「…後でまた様子見に来る」
「分かりました」
先輩が出て行った後 ベッド脇の椅子に腰を下ろし
創の寝顔を見つめた
目元が赤味を帯びていて
あの後佑吾さんに怒られてしまったのかと思うと
流石に申し訳なくなった
「…創」
頬に手を伸ばそうとした時 創が微妙に寝返りを打って
触るのを思い止まった
「ん⁇」
創が動いた事で 襟足の髪が少し乱れ
白い項に何か跡があるのが見えて そっと髪を上げた
其処に散りばめられた赤い鬱血痕に
思わず ハッと笑ってしまった
「…すっげぇ 独占欲」
言いながら悔しくて
無意識に近くにあったシーツを握り締めていた
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