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母親 Ⅵ〜side創〜
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「創…コレ」
手渡された物を見て 目を大きく見開いた
「…お母さん」
色褪せてしまっている写真
その中にいるお母さんと僕はすごく幸せそうに笑っている
僕の性別判定が出る前 まだ穏やかだった頃の写真だ
「それ 裏返してみて⁇」
「⁇ うん…」
首を捻りながら 言われた通り裏返すと
そこには文字が書いてあった
掠れてたが 記憶の中にあるお母さんの字に
胸が締め付けられて また喉の奥が熱くなった
“ 守ってあげられなくて ごめんね 愛してる ”
その文面に ボロボロと涙が溢れたが
横から佑吾が 全部拭い取ってくれた
指の先を辿る様に見上げると
佑吾はすごく優しく笑ってくれていて
堪らずその胸に 頬を擦り寄せた
Ωの中には 番になる事を拒む人がいる
それは αに番を解消された時の事を考えると
恐ろしくて 堪らないからだと言う
お父さんに家を追い出された日
不安になってお母さんを見上げると
いつもと同じ様に笑ってくれてすごく安心する事が出来た
でもあの時 お母さんは どんな気持ちだったんだろう
それは今の僕にも 到底理解出来ないものだと思う
「俺は Ωの事知りたくても
文献以上の事は どうしても分からないけど…
創のお母さんは 創が居たから頑張れたんじゃないかな」
そう思っても良いのかな
お母さんにとって僕は大切だったって言っても良いのかな
「俺はお母さんの代わりには なれないけど
これからは 俺が創の事 ずっと守るから」
「…うん…ありがとう…」
なんて安心出来る言葉なんだろう
佑吾の心地の良い声色に いつまでも身を任せていたい
「創 この写真
綺麗に復元する事も出来ると思うんだけど…どうする⁇」
佑吾にそう言われて 少し考えを巡らせた後
僕は首を左右に振った
「大丈夫 この日の事 覚えてる
家に新しいソファが来てお父さんが撮ってくれた写真…」
お母さんも この時はお父さんも 勿論僕も 皆笑っている
「お母さんの文字が消えちゃったら嫌だから…
大丈夫 ありがとう佑吾」
「ん…写真立て買って来たから 飾ろう⁇」
「うん…」
佑吾は 僕の目元にキスを落とすと 一度部屋を出て行った
でも直ぐに戻って来てくれて
先程話していた写真立てを僕にくれた
綺麗なガラスフレームの中に 丁寧に写真を仕舞うと
そのまま机の上に飾り 佑吾の手を取った
「お母さん 僕の大好きな人です 僕…今 すごく幸せです」
そう報告すると セピア色のお母さんが
もう一度笑ってくれた様に見えた
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