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苦衷
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「レンレン 大丈夫⁇」
放課後の生徒会室
レンレンは 積み上げられていた書類を処理してるみたいなんだけど
判子を押す場所を間違えてしまっていて
残念ながら 明らかにやり直しだ
「あ…悪い」
「…何かあったの⁇」
僕の問い掛けに 若干頬を赤らめたのが分かって
また泣き叫びたくなった
「…昨日 佐倉と食事に行った」
「そう…なんだ…良かったね‼︎」
「ああ…」
好きな人の幸せな報告が こんなにも嫌だと思うなんて
そんな自分自身も すごく嫌いだと思った
「ごめん…僕 ちょっとトイレ行って来る…」
「ああ」
生徒会室を出て 大きな溜息を吐き出すと
目を擦りながら 廊下を歩いた
トイレの前に差し掛かった時
廊下に足音が響いて来て 咄嗟に顔を上げると
道着姿の健が 前から歩いて来るのが見えた
僕に気がつくと パッと表情を明るくして
大袈裟と言いたくなる程に 手を大きく振っている
「理央先輩 お疲れ様です」
「お疲れ様…どうしたの⁇ こんな所で」
生徒会室は別館の三階で
用の無い生徒が 立ち入る様な場所では無い
しかも 明らかに部活途中という感じだ
「あの 榎戸先輩 居ますか⁇」
「稜⁇ 居ないよ⁇」
「えー⁉︎ もう…先輩どこ行っちゃったのかな…」
頭を掻くその様子に
悪いと思いながらも つい笑ってしまった
「もし来たら 健が探してたって言っておくよ」
「ありがとうございます お願いします」
健はそう返事をした後 僕の顔を覗き込んで来て
咄嗟に少し後ずさってしまった
「先輩…何か元気ない⁇」
「え⁉︎」
図星を突かれてドキッとしていると
健はそんな僕の頭を 大きな手で撫でた
「大丈夫ですか⁇
もしまた泣きたくなったりとかあったら
俺の胸で良ければ貸しますよ⁇」
ニッと歯を見せて笑う健に何故だか顔が熱くなってしまい
咄嗟にその手を振り解いてしまった
「だ 大丈夫‼︎ ちょっと寝不足なだけ‼︎」
弾かれた手を 健は目をぱちくりとさせながら見ていたが
直ぐにまた先程の笑顔に戻っていった
「寝不足も 心配っちゃ心配ですけどね」
何でそんな事を言ってるのかが分からなくて 無駄に焦る
色素の薄い瞳に全てを見透かされそうで
ちょっとだけ怖かった
「りょ 稜が来たら ちゃんと伝えるから…またね」
半ば強引に健を退けると 元来た道を引き返した
「…もう嫌だ」
そんな言葉が無意識に口の端から滑り落ちた
僕はβの子と 仲良くする訳にはいかない
きっとまた 嫌な思いをさせてしまうから
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