アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
哀愁
-
「佐倉 すまない…」
「とんでもございません
今 部屋を手配致しましたので 参りましょう」
「…ああ」
開場から少しして 社長に呼び出された
佑吾様に許可をもらい 指定の場所へ行くと
ベンチで社長が蹲っていたのだ
「社長⁉︎ いかが致しましたか⁉︎」
「佐倉…発情期が来てしまったんだ…
予定よりもかなり早くてな…抑制剤 持ってないか⁇」
番の方と死別している社長は
他の人にフェロモンが効く事は無いが 体への影響は出る
自分の胸ポケットに手を入れるとそれを全て社長に渡した
「飲んで下さい どこか休める場所を確保して参ります」
「本当にすまない…助かる…」
「とんでもございません 何なりとお申し付け下さい」
社長に頭を下げると フロントへ急いだ
会場はホテルの広間だった為
直ぐに部屋を用意する事が出来た
社長を無事にその部屋まで送り届けると 会場へ戻り
佑吾様の姿を探した
数分もしない内に見慣れた後ろ姿を発見し近付いて行くと
くるりとその体が翻って 蓮様だった事に気が付いた
それなりに近い距離だった為
バチッと目が合ってしまい 一瞬の間の後
今まで見た事も無いような切なそうな眼差しを向けられて
何とも言えない感情に 胸が締め付けられる様に痛んだ
こんな気持ちは 今まで佑吾様にも抱いた事が無い
「…う⁉︎」
胸の辺りの服をグッと握った時だった
ドクンと身体全体の血液が沸騰する様な感覚に襲われ
覚えのあるその感じに
スーツの上から自分の体に爪を立てた
「…っ」
冗談じゃない
自分の発情期は 先月終わったばかりだ
だから 大丈夫だと思って 社長に全て渡したのに…
「…はぁ」
少しでも熱を逃がす様に 息を吐き出した後
崩れ落ちそうな体を何とか支えながら 会場の外に出た
体が熱くて 頭がボーッとする
それでも車に置いてある予備の抑制剤を取りに行こうと
気力を振り絞ってエレベーターの前に着いた時
後ろから バン‼︎と顔の横の壁に人の手が突かれた
恐る恐る振り返ると
そこには居たのは蓮様で 何故かホッとしてしまった
「…蓮様」
「佐倉‼︎ 大丈夫⁉︎ 薬は⁉︎」
「…地下に停めた…車に…」
「分かった」
開いたエレベーターに
ほぼ抱き抱えられる様な形で乗り込んだ
誰も居ない密室空間に
荒い呼吸の音だけが響いて 変な気分になる
しかし 蓮様がいきなり壁に頭を思いっきり打つけ
その音に 目を大きく見開いた
「れ 蓮様⁉︎」
「大丈夫だから 気にしないで…」
真顔で制してくれてはいるが もしかしなくても
自分の為に我慢してくれているのだろうか…⁇
Ωのフェロモンを嗅いだαの状態は
勿論自分には分からないが
見上げた横顔に 目頭が熱くなった
それは恐らく 発情期の所為だけではないのではと
自分自身に心の中で問い掛けていた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
279 / 365