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猫 Ⅴ〜side佑吾〜
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「…勝手にごめんなさい」
しょんぼりしている創の手の中には
真っ白な子猫が抱かれている
俺としては様子が変だった原因が分かり
何処と無くホッとしていた
「飼いたいの⁇」
俺の問い掛けに 小さく首を縦に動かす創
創が俺の方を見上げれば 猫の方も俺の事を見上げている
2つの青い瞳に ジッと見つめられ
思わずフッと笑ってしまった
「ちゃんと責任持って世話出来るなら良いよ」
そう言うと創は 一気に明るい表情になり
腕の中に抱えていた猫を 高く抱き上げている
「ありがとう 佑吾‼︎ 良かったね 猫さん」
猫にさん付けって 可愛すぎないか⁇
目の前ではしゃぐ創を 目を細めて見てしまう
「その子 なんか創に似てるね」
創の後ろに回り そのまま抱き寄せると
創は嬉しそうに 俺の方を振り返った
「そうなの‼︎
最初は灰色だったから分からなかったんだけど
僕もさっき同じ事思ったんだ」
「そっか」
最近は安定しているとはいえ
創の無邪気な表情は 本当に安心する
アニマルセラピーとかも聞くし 良いのかもしれない
「名前どうするの⁇」
「…うん」
何故か創の表情が曇り
猫に顔を埋めた後 改めて俺を見上げた
憂いを帯びた瞳が揺れている
「…名前…“そう”にしようかなって思うんだけど…」
「…え⁇」
その提案にはかなり驚いたし 大丈夫なのか心配になった
どう反応したら良いのか悩み 創の真っ白な手を握った
「俺は良いと思うけど…創は大丈夫⁇」
「うん…
僕ね 佑吾に そうって呼んでもらうの好きだったから
それに…」
創の震える声に猫まで心配になったのか
すりすりと体を寄せている
そんな猫を見て 創は小さく笑った
「あの時の事 無かった事には出来ないから…
だから少しでもあの頃の自分を認めてあげられる様に
この子にお手伝いしてもらいたいなって…
思ったんだけど…」
言いながら不安になってしまったのか
創は悲しそうに眉を寄せている
「でもこの子に悪いかな…」
不安そうな顔をしている創の頭を撫でると
華奢な身体を 猫ごと抱き寄せた
「大丈夫じゃない⁇ 其奴 創の事大好きみたいだし」
「そうかな⁇」
「うん」
俺が頷くと 創はすごく綺麗に笑って
一瞬見惚れてしまっていた
「…今日からよろしくね そう」
創の呼びかけに 小さく鳴いて応えている
そのやり取りは まるであの頃の自分に
創が手を差し出している様にも見えて
俺の方が ジンときてしまった
創の記憶の在り方について
俺にはどうしたって共感する事は出来ないけど
こうやって少しずつでも 向き合って行けたらって
そう思った
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