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渉外
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「じゃあ 悪いんだけど 少し待っててもらえるか⁇」
「はい 何かありましたら ご連絡下さい」
佐倉は 携帯をフロントに置くと
助手席にあったノートパソコンを開いている
俺は創の手を握ると
一週間前に来た建物の敷地内へ足を踏み入れた
車の中では 大丈夫そうだったが
やはり創の顔は 少し強張っている
手を繋ぐ程度の事しか出来ない自分が 本当にもどかしい
「桃坂様 お待ちしておりました」
入口には先週の男が立っていて
契約書を書いた部屋に案内された
「ではこちら ご確認の上 サインをお願いします」
「はい」
契約書と交換する様にアタッシュケースを渡した
男はそれを持って別室へと消えて行き
俺は渡された書類に目を通した
読み終え サインをすると 隣に座る創に視線を移した
顔色が悪い
ここで嫌な思いを沢山してきただろうから 無理もない
「もう終わるからな⁇」
そう言って頬に触れると 青い瞳が揺れて
俺の左手を強く握り締めた
「…ゆうご」
「うん⁇」
「…ギュッてしても良い⁇」
「ん…おいで」
俺が手を広げれば 創は俺の膝の上に跨り 首に腕を回した
キツく抱き着かれて 少し苦しかったけど
こんな事で創が少しでも楽になってくれるなら
全く苦にならなかった
「すみません お待たせしました」
戻って来た男は 満足そうな笑顔を浮かべている
手には鍵を持っていて やっとコレを外してあげられると
少しホッとした
「おや 創君がこんな風に誰かに懐いてるところなんて
初めて見たな」
その言葉を聞いて 正直嬉しかった
自分の中の独占欲が 少し満たされていくのを感じる
首輪を外してもらうのに 創を降ろそうとしたら
そのままで良いと言われた為
脇の辺りに置いた手を背中の方にズラし
気持ち程度に さすり上げた
襟足の髪だけ持ち上げて欲しいと言われ
細い髪を掌で押さえると
そのままジッと 重そうな金属を見つめた
男が 鍵を差し込み 暗証番号を入力すると
カチャッと音を立てて 創の首から鉄の塊が外れた
「はい 出来ました 創君良かったね〜
こんなに優しくて 格好良くて
しかも あの桃坂財閥の人に引き取ってもらえるなんて」
余計な事は言わなくて良いと 釘を刺そうとしたのに
創が先にコクリと頷いたものだから 俺は黙るしかない
何だか 妙に照れ臭い…
「あ この子の荷物なんですけど
薬類は 返却をお願いしておりまして…」
持って来ていた 創のボストンバックをチラッと見る男に
俺は鞄を丸ごと渡した
「いえ 全て新しく買い替えますので こちらは結構です」
そう言い放つと 男は嬉しそうに にやにやと笑っている
全部返って来るなんて ラッキー‼︎ とでも言いたげな感じだが
これを着せる人がいる事の方が 俺には疑問だった
「そうですか‼︎ ありがとうございます‼︎
あ この子 二週間以内には 発情期が来る予定なので
早目に病院に行く事を オススメ致します」
「わかりました」
「あとこちら控えと この子に関する書類が入ってますので」
封筒を受け取るのと同時に 部屋の電話が鳴り響いて
男は明らかに出たそうにしている
「どうぞ 私達はこれで失礼します
ありがとうございました」
「すみませぇん
また何かありましたら よろしくお願いします」
深々と頭を下げた男に軽く会釈をすると
創を膝から降ろし 手を取って 部屋を後にした
緊張のせいか すっかり冷たくなっている創の手を温めてあげたくて
小さくて細い手を 強く握り締めた
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