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帰路 Ⅱ
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「佐倉 今日本当にありがとう」
「とんでもございません
また明日 お迎えに上がります」
「ああ 頼む」
佐倉は創に視線を移すと ニコッと笑いかけて
軽く会釈をしている
創もつられて頭を下げていて
そのやり取りは側から見ていると
とても微笑ましいものだった
佐倉が走る去るのを見守ってから 創の手を取り
目の前にあるコンビニに入ったのだが
購入したい物を思い浮かべて 隣にいる創をチラッと見た
「…創 何か食べたい物とか飲みたい物 見ておいで⁇」
「え⁇」
「ね⁇」
「…僕 大丈夫だよ⁇」
うん そう来るだろうとは思ってたんだけど
お願いだから行って欲しい…
創の前で カゴにコンドームの箱を入れるのは
やはり少しばかり抵抗があった
「…やっぱり 行って来ます」
俺の微妙な空気を感じ取ったのか
創は俺から離れて 奥の方へと行ってくれた
その隙に俺も サッと移動すると
目当ての物を 二箱カゴに放り込み
その上に日用品を適当に入れた
目標を達成した俺は 創の姿を探すと
デザートコーナーの前に立っているのを発見し声をかけた
「何か食べたいのあった⁇」
「…これ」
創の手には いちご牛乳プリンが握られていて
その可愛いチョイスに 口元が緩む
「他は大丈夫⁇」
俺の問いかけに 首を縦に動かしたのを確認すると レジへ向かった
順番が回って来て 物が 一つずつ取られていく様に
ハッとなって創を見ると
レジのディスプレイに目が奪われている様で
ホッと胸を撫で下ろした
会計を済ませると 直ぐ横からマンションに入り
エレベーターに乗った
『奥まで弄って〜って』
先程言われた言葉が頭を過り
無意識に手に力が入ってしまっていた
あの男は 創の本当の名前も知らない
その程度の奴なんだと自分に言い聞かせた
その事だけが唯一 俺がアイツよりも
創の事を知っているのだと 自信を持って言える事だった
昨日 創がその事を話してくれていなかったら
俺の今の精神状態はどうなっていたか分からない
「……ゆうご⁇」
手が痛いのか 不安そうに俺を見上げる創に
慌てて笑顔を作り 手を離した
「ごめん 痛かった⁇」
「大丈夫」
創が 遠慮がちに 俺の中指から小指までの三本を握った
伏し目がちな表情から どこか妖美な雰囲気を感じる
蕩ける位に抱きたい
そんな妄りがわしい事を 横で俺が思っているなんて
きっと創は 想像もしていないと思う
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