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星に願いを
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「ゆう、これなに?」
梅雨を飛び越えていきなり夏になってしまったような。
そんな暑い日が続く7月の初めの水曜日。
夕食を終えてリビングでくつろいでいると、ヒロにそう尋ねられる。
その声に、スマホに落としていた顔を上げてヒロの視線を辿ると、ちょうどテレビのすぐ横を示していて。
「あ、それスーパーでもらったんだよ。」
「ふーん。」
そこに置いていたのは、今日貰ってきたばかりの七夕飾り。
よく行くスーパーでもらったんだって答えると、何か考えてるような顔をされる。
「ヒロ?」
「これ、子供しかもらえないんじゃなかったっけ?」
「そうだけど……くれたんだもん。」
簡単な飾りと、まだ何も書かれていない短冊が2枚付けられた小さい笹。
近所のスーパーで毎年配られるそれは、確かに子供向けのもので。
俺以外の大人は貰ってなかったし、俺も一応遠慮したんだけど……ってヒロに説明する。
「それくれたのってさ、男だろ。」
「なんで分かるの?」
「分かるよ。ゆうは遠慮したのにくれたんだろ?」
昼下がりのスーパー。
七夕飾りを配っていたのは、大学生っぽいアルバイトの男の子で。
綺麗だなって飾りを見てた俺に、あげますよって言うから遠慮すると、押し付けるみたいにそれをくれた。
まるで見てたみたいに、ヒロにそのやり取りを言い当てられたことに驚いて。
「ヒロ、見てたの?」
思わずそう尋ねると、爆笑されてしまう。
「見てないけど。」
「けど?」
「ゆうのことなら、何でも分るよ。」
俺のことなら、何でも分かる。
まるでものすごく当たり前の事みたいにそう言われたから、なんだか素直にそうなんだって思ってしまって。
「そうなんだ?」
笑ってるヒロの顔を覗き込みながらそう言うと、更に笑われてしまう。
「ねえ、ヒロ」
「んー?」
「短冊にお願い書こうよ。」
俺のこと、いつまでも笑ってるヒロ。
何がそんなに可笑しいのかは分からないけど、機嫌のよさそうなその雰囲気に悪い気はしなくて。
七夕飾りを貰った時からしたいと思っていたことを提案する。
「いいよ。」
そんな俺のお願いに頷いてくれたヒロの返事に嬉しくなって笑顔を返すとまた笑われて。
「笑ってないで書こうよ……。」
「はいはい、分かったよ。」
笹から外した白紙の短冊をローテーブルに並べて、お願い書いてってヒロのことを急かした。
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