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ヒロと一緒に短冊に願いごとを書いた日から二日後の七月七日、七夕の日。
朝から小雨が降り続いていた空模様は、夜になっても晴れることはなくて。
それどころかより一層雨足は激しさを増して、雷鳴まで聞こえてくるような天気になってしまった。
「……雨、止まないね。」
「そうだな。」
仕事からの帰り道。
いつも通り迎えに来てくれたヒロが運転する車の助手席で、せわしなく左右に動くワイパーを見つめながらそう言う。
「せっかくの七夕なのに残念だね、ヒロ。」
「ま、梅雨なんだし仕方ないだろ。」
「それはそうだけど……。」
確かにヒロの言う通り、梅雨真っ只中の今の季節。
ここ数日、ずっと曇りや雨の天気だったから今日だけ晴れるなんてそんな事ありえないのかもしれないけど。
七夕の日には晴れ渡った夜空に綺麗な星が瞬くのを見たかったなぁって、少し残念に思う。
夜空いっぱいの星をヒロと一緒に見られたら、きっとすごく素敵で楽しいだろうから。
そんな事を考えているうちに車はマンションの駐車場に到着して。
いつも通り遅い夕食を食べて、お風呂に入って、寝室に向かう。
そう、いつも通り……って思ったのに。
寝室のドアを開けると、真っ暗なはずのその部屋の天井は満天の星空になっていた。
「ヒロ、これなに!?」
びっくりして思わず大きな声でそう尋ねてしまうと、手を繋いで隣に立ってるヒロが満足そうに笑って。
「ゆうが朝から星が見たいって言ってたからプレゼントだよ。」
そんなことを言われたから、驚いてしまう。
「これ、どうしたの?」
「魔法、かな。」
天井に星空が映し出されてる以外はいつもと何も変わらないはずなのに、まるで別世界みたいな寝室。
いつどうやってこんな事をしてくれたのか全く分からなくて訊いたのに、ヒロからはふざけた答えしか返ってこなくて。
「魔法って……俺、もう子供じゃないから騙されないよ?」
そんな風に言うと余計笑われてしまって。
俺を迎えに行く前にホームプラネタリウムの機械を買っておいて、お風呂に入る前のほんの少しのタイミングにここにセットしておいたんだっていう事を告白してもらう。
「すごい、綺麗だね……ヒロ。」
「満足した?」
「うん、ありがと……。」
七夕には、ヒロと一緒に星が見たいって思ってたこと。
どうして分かったの?
どうして、俺が願うこと、いつもすぐに叶えてくれるの?
ぎゅっとヒロの手を握ったまま声には出さずにそう問いかけると、繋いだ手を引かれてベッドに連れて行かれて。
「星、一緒に見ようか。ゆう。」
「うん。」
そう言ったヒロの言葉に頷いて、ふたりで並んでベッドに寝転んだ。
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