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「あ、紅葉!」
「ほんとだ。」
車で1時間弱走って到着したダムの側にある公園。
春は桜並木が有名なこの公園の駐車場の側に、色づき始めたばかりの紅葉を見つけて。
ヒロに綺麗だねって言う。
「もうすっかり秋だね。」
「やっぱり見頃にはまだ早かったけどな。」
「そうだけど……、気持ちいいね。」
「ん、そうだな。」
夕暮れ前の優しい日差し。
山の中の空気は、澄みきっていて。
深呼吸をしてその空気を味わいながらヒロとの散歩を楽しむ。
「なんか、けっこう寒いね。」
「手袋とマフラーすれば?」
「うん。そうする。」
持って来てるんだろ?って、俺の背負ってるリュックに手をかけたヒロ。
そのまま開けられた中には、去年母さんがくれたマフラーと、そして昨日……今年のプレゼントって言ってくれた手袋が入っていて。
マフラーを首に巻いたあと、ミトン型のそれを手にはめるとすごく温かくて。
そういえば、この手袋も瑞希とお揃いって言ってたなって、昨日の会話を思い出す。
「ほら……ゆう、手。」
「はい。」
マフラーと手袋を取り出すために一瞬離されていた手。
その手は、すぐにまた繋がれて。
手袋をはめた俺の手を握ったヒロが、まじまじとそこを見つめる。
「ヒロ……なに?」
「んー?子供みたいだなって思ってさ。」
「えー、それひどいよぉ。」
確かに、この年になってミトン型の手袋ってちょっと子供っぽいかもしれないけど。
けど、それだけで子供みたいってちょっと言い過ぎじゃないかなってヒロを見つめ返す。
「別に悪い意味じゃなくてさ。」
「じゃあ、どんな意味?」
「子供みたいに守ってあげたくなるって言ってるんだよ。」
俺の手を引いて歩きながら、そんな事を何気なく言うヒロ。
守ってあげたくなる……、なんて。
そんなこと、好きな人から言われて嬉しくならない人なんかいないと思うんだけど。
ヒロがあまりにも普通だから、俺も何故か普通の様子を装ってしまって。
急に無言になってしまいながら、嬉しい嬉しいって思うのを一生懸命隠してヒロの後を付いて行った。
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