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鳥が飛んでるね、とか。
芝生も秋の色だね、とか。
こんな花が咲いてるね、とか。
目に映ったものをいちいち報告する俺に、ヒロは笑ってくれて。
駐車場から少し歩いたところにある広場で、小さい子がお母さんに遊んでもらってるのを微笑ましく眺める。
「小さい子って、可愛いよね。」
「そうだな。」
今より少し前……俺がまだ母さんと今みたいに会ったり話したりできなかった頃。
こんな風にお母さんと子供が遊んでる姿を見ていると、なぜか悲しくなって。
だけど今は、こんなにも穏やかな気持ちで見つめる事ができる。
きっとそれは、今俺が家族からの愛情で満たされているからで。
そして、自分にとって一番大切な人の隣っていう場所を手に入れたからだと思う。
「ゆーう、なに考えてんの?」
「……ヒロのこと。」
そんな事を考えてると、俺をからかう口調のヒロがそんな事を尋ねて。
ヒロの口調を真似して、でも本当のことを答える。
「そっか。」
「うん。大体いつもそうだよ。」
少し茶色がかった芝生を踏みしめながら、何気なくそう言葉を重ねると俺の答えが面白かったのかヒロが笑って。
「じゃあ、そんな俺のことばっかり考えてるゆうにプレゼント。」
そう言って、ポケットから封筒を取り出す。
「ありがと……。なか、見ていい?」
ヒロから受け取った封筒。
旅行会社の名前が印刷されてるそれは、思いもよらないもので。
中身が気になって仕方ない。
「いいよ。」
そう言って、ミトン型の手袋をしている所為で自由が利かない俺に代わって封筒の中身を取り出してくれるヒロ。
そこには、クリスマスの12月25日とその次の日に予約された国内旅行の内容が印刷された紙が入っていて。
「休みの許可はもう取ってあるから。」
その日、仕事だよって思ったのがそのまま顔に出ていたらしい俺にヒロがそう言う。
「……また里見と変なこと考えてるの?」
思えば何度も騙されてきた、ヒロと里見の悪だくみ。
また何か恥ずかしい事になっちゃうんじゃないかって警戒しながらそう尋ねると、さぁ……ってとぼけた顔をしたヒロが俺の質問を否定はしなくて。
心配なのは、心配だけど、クリスマスの旅行っていうプレゼントはすごく嬉しくて。
「よく分かんないけど、嬉しいよ……ヒロ。」
よく分からないっていうのと嬉しいっていう気持ちを伝えると爆笑されて。
「素直に喜んでいいよ、ゆう。」
そんな風に言ってもらえたから、もう一度ありがとうを言ってヒロの腕にぎゅっと抱きついた。
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