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ヒロの腕にしがみついたまま広場を散歩して。
小さな橋を渡ったり、川の流れの中に小さな生き物を見つけたりしてはしゃいで。
そんな事をしているとあっという間に時間が過ぎて行ってしまって。
夕焼け色に染まっていく空を見つめながら、そろそろ帰ろうかってヒロが言う。
「うん、そうだね。」
楽し過ぎて、はしゃぎ過ぎて。
すっかり満足した心でそう返事をして来た道を引き返していると、俺達が渡った小さな橋の横に飛び飛びに石が置かれているのを見つける。
「ヒロ、これって石を渡って向こうまで行けるのかな?」
「行けるだろ。」
深さが10センチ有るか無いかの浅い川。
来た時は橋を渡ったから、帰りは違う道を行きたくなって。
ここは子供でも楽しむ事ができるように作られてる公園だから、俺でも平気だろうって思って石を渡ることに決める。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。」
大人が一人乗ったらいっぱいになっちゃうくらいの石。
いくつも向こう岸に向かって並べてあるそれを、お手本って感じでヒロが簡単に渡って行って。
到着した向こう側で割と本気で心配しながらそう訊いてくるから笑ってしまう。
ほんと、ヒロってば俺のこといくつだと思ってるんだろう。
こんな、幼稚園の子でも簡単に渡れそうな石なんて大丈夫に決まってるじゃん。
そう思いながらすいすい石を渡って行って。
ヒロが待つ向こう岸まであと一つ。
「わぁっ……!」
そう思った瞬間、石の上でバランスを崩してしまって。
ヒロが慌てて手を伸ばして俺を支えてくれたけど、ばしゃんって大袈裟な音を立てて右足が川の中に落ちてしまった。
「……。」
「ほら、ゆう。仕方ないだろ?」
「俺、歩けるよ?」
「靴、ずぶ濡れだろ。」
「でも……」
「いいから、ほら。」
幼稚園の子でも渡れるような川に落ちてしまった俺。
落ちたのは右足だけだったけど、その右足のスニーカーはぐっしょりと濡れてしまっていて。
これで駐車場まで歩いたら気持ち悪いだろうなって、思うけど。
だからって、俺のことをおんぶしようとしてるヒロの背中にこのまま身を委ねるのも何だか気が引ける。
「やっぱり歩くよ。」
「今更なに遠慮してるんだよ。」
「……。」
確かに。
自分の恥ずかしい所も情けない所も。
俺の生まれてから全部を知ってるヒロに遠慮するなんて今更かもしれない。
たった一言でこんな風に思ってしまうのは、もしかして俺のことをあやすプロらしいヒロの技なのかもしれないけど。
だけど、俺はもう変に遠慮するのもおかしいなって気持ちになってしまっていて。
目の前の背中にそっとおぶさる。
「落ちるなよ?」
「落ちないよ……。」
「さっき落ちただろ?」
「それ……もう言わないでよ……。」
俺の体重が背中にかかったことを確認してから立ち上がったヒロ。
23歳にもなっておんぶしてもらうなんて、恥ずかし過ぎて。
からかわれて、いたたまれなくて。
でも、嬉しくて。
ヒロの肩に顔をくっつけて、おとなしく駐車場までおんぶしてもらった。
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