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Sweet Sweet Moments
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「みずき、誕生日おめでとー!」
クリスマスイブの夕方。
仕事終わりに、いつも通りヒロに迎えに来てもらって。
帰って来た家のリビングでかけた電話の相手は、一年前の今日、生まれてきてくれた瑞希。
電話の向こうの瑞希は、まだ1歳の赤ちゃんだから俺が言った言葉の意味はたぶん分かってないけど。
俺に懐いてくれてるから、俺の声に反応して嬉しそうに笑ってるのが聞こえる。
『優希、プレゼントありがとう。』
「うん。喜んでくれたかな?」
『すっごく気に入って、今日はずっとこれで遊んでたよ。』
「そっか、良かったぁ。」
今日の指定で送ったプレゼント。
小さい子が喜びそうだと思って選んだ、音が鳴るおもちゃを瑞希は気に入ってくれたみたいでほっとする。
『優希』
「なに?母さん。」
『何か嬉しい事でもあるの?』
「え!?どうして?」
『んー?何だかいつもより声が楽しそうだから。』
普通の会話を普通にしていたつもりなのに。
しかも、表情の見えない電話での会話なのに。
指摘されてしまったこと。
それは、この前の23歳の誕生日からずっと周りの人達に指摘され続けてることで。
嬉しそうとか、良いことあった?って訊かれるのはもう何回目だろうって記憶を辿る。
『優希?』
「あ、あのね……ヒロと明日から旅行するんだ。」
『クリスマスに?』
「うん……そう。」
『そっかぁ。だから嬉しそうだったんだね。』
「……うん。」
二か月前から、楽しみに楽しみにしていた旅行。
それがもう明日に迫っていて。
嬉しさを電話でも隠し切れないっていう自分の単純さが何だか恥ずかしいけど。
幸せに生活してるよって母さんに知ってもらえるのは悪い事じゃないよねって思いながら、会話を続ける。
『気を付けて、いってらっしゃい。』
「うん……、ありがと。」
「プレゼント、喜んだって?」
それじゃあまたねって、母さんと瑞希に言って電話を切ると待ち構えていたようにヒロが口を開いて。
その言葉に頷きながら、目の前にいるヒロの顔をじっと見つめる。
「なんだよ、ゆう。」
「ううん……なんでもない。」
旅行、楽しみだね。
この二か月で何度言ったか……それこそ数えきれない、そんな言葉をかろうじて飲み込む。
だって、子供みたいにはしゃいでバカみたいって思われちゃいそうだから。
「明日、楽しみだな。」
そう思って、せっかく我慢したのに。
ヒロからかけられた言葉は、簡単に俺の心を解いて。
「うん……すっごく楽しみだよ。」
嬉しさを抑える事ができなくて、そう言いながらヒロにぎゅっと抱きついた。
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