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「さむーいっ!けど、楽しいねっ!」
冷たい風をびゅんびゅん切って、空飛ぶ絨毯に乗って旋回するアトラクション。
そのあとも、俺が調べてた通りの順番でパーク内を歩き回って。
ワゴンを見つけるたびに買い食いをするヒロから少しずつ食べさせてもらっているうちにお腹いっぱいになってしまう。
人であふれるクリスマスのディズニー。
今日までのこのシーズンを満喫するように、みんな楽しそうで。
いつものデートよりも何倍もはしゃいでしまいながら、ヒロの手をぎゅっと握る。
「ゆう」
「なーに?」
「これ、乗りたがってたやつ。」
ゆっくりとパークをほぼ一周して戻ってきたのはヴェネツィアン・ゴンドラ。
17時前の空は、もう暗くなっていてライトアップされたヨーロッパの港町はすごくロマンチックで。
その中の運河をキャストの人が漕ぐゴンドラに乗ってひとめぐりする。
「この運河にはたくさん橋が架かってますが、その中で一つだけ願いが叶うと言われてる橋があります。」
キャストさんが始めた案内、これがこのアトラクションに乗りたかった理由。
「あとでご案内しますので、それまでに願い事を考えておいてください。」
俺の願い事なんて、いつでもたったひとつだけで。
「ゆう、なにお願いするんだよ?」
考える必要なんて無いその願いを心の中で確認してると、ヒロが小さな声でそう尋ねてきて。
「……ひみつだよ。」
少し考えたあと、そう答えると笑われる。
「ヒロは?」
「えー、じゃあ俺も秘密かな。」
いつまでも笑ってるヒロにそう訊き返してみると、可笑しそうにはぐらかされて。
周りに視線を向けるから、それに倣って俺も景色を楽しむ。
キャストさんのおしゃべりに耳を傾けながら見えるのは、煌めく夢の世界。
ゴンドラが行きかう度にチャオって言い合って。
そんな事をしているうちに、初めに言っていた願いが叶うっていう橋の前にやって来る。
「みなさん、準備は良いですか?さあ、目を閉じて。願い事を。」
言われた通り、目を閉じて。
一瞬の静寂のあと、キャストさんが歌い始める。
涙が出そうになるくらい、綺麗な声。
運河に響くその歌声に乗せて、ヒロとずっと一緒に居られますようにって……心の中で願いを唱える。
短い歌が終わって瞳を開けて。
願い事が叶いますようにって言ってくれたキャストさんに、ヒロと一緒に拍手を送った。
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