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言いなりコーンポタージュ
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冷え込みが厳しくなり、外が暗くなるのも早くなってきた。吐息はまだ白くはならないけれど、寒さに不慣れな身体は秋と冬に挟まれて、些細な寒暖差に鼻水を出してくる。
電車の中でふと、自分が狩人のように人の群れを見つめていない事に気が付く。
どうしようもなく惹かれてしまう人に出逢って、常に欲望のはけ口を探し求める必要性を感じられなくなったからか、それともあの電話でビビってるのか。
懸念していたあの警察官は、管理人には何も伝えなかったらしい。
どういうつもりなのか、泳がせているのか、それとも捜査には直接関係無かったから、放っておいたのか。
ニュースをつぶさに見ていると、7件目が出たところで、犯人は捕まった。30代の女性で、支離滅裂な供述を繰り返していると報道されている。
はとちゃんの母親は、それよりもっとひどい状態、なのだろうか。軽く検索したところによれば、精神の病には遺伝要因があるタイプも存在するらしい。
むごたらしい、と思う。
もう少しうまく、はとちゃんを産んであげられなかったのか? と責めたくもなる。どうにもならないこと、不可能だと分かっていても、親も生まれも選べないという無慈悲さが悲しい。
いつもの最寄り駅、はとちゃんは灰色のセーターに黒い厚手のスカート、黒いストッキングを履いて、靴はいつものひもの無いスニーカーだ。
この靴以外、見たことがない。
持っていない可能性すらある。
白地に黒と赤のラインが入ったマフラーを巻いて、顔の下半分が隠れて、髪も埋もれている。女子高生みたいだと思った。
女でもなく、とっくに成人していて、なおかつ高校に行ったこともないはとちゃんにそんなことを思うのは、非常に矛盾を感じる。
仕事終わりの俺を見て、はとちゃんは嬉しそうに駆け寄ってきた。白い肌が、寒さで桃色をしている。
「寒くなかった?」
「大丈夫です。ばかはかぜひかないんですよ」
「……自虐がキツいよ。どう反応していいのか、分からないな。行こっか」
手を出すと、冷たい小さな手がきゅっと握り返す。
「うん。おとまり、はじめてだから、楽しみにしてたんだよ。しゅうとさんのベッド、ぼくのおへやのよりふかふかだもん」
俺の部屋に入れて、玄関口でそっと抱きしめると、はとちゃんはマフラーをそっとゆるめ、ほおを赤くして目を閉じ、唇を少しだけ突き出している。女の子より女の顔をしているよな、と唇を重ねる。
俺以外の奴にそんな顔見せるな、と内心思う。
「……ホットココアでも淹れようか。ソファー座って、待ってて」
はとちゃんはいつも、ソファーの端っこの方にちょこんと、遠慮がちに座る。いじらしいと思うし、卑屈だな、とも思う。
俺は牛乳をレンジで温め、ココアパウダーとシナモンシュガー、そしてあらかじめ砕いて細かくしておいた精力増強剤を溶かし、くるくる混ぜる。
「はい、どうぞ」
何食わぬ顔ではとちゃんに手渡し、はとちゃんは何の疑問も抱かずにそれをふうふうくぴくぴと飲む。気が付かない。
俺はカフェオレを飲み、ため息を深く吐く。眼鏡を外し、目頭を指で揉み込む。
「……お仕ごと、たいへんなの? おつかれさまです。ぼく、おじゃまだった?」
「ううん。邪魔じゃないから、もっと近くに座ってよ。そばに、おいで」
はとちゃんはおずおずと俺の隣まで近寄って、心配そうに俺の顔色を伺う。俺は眼鏡拭きで眼鏡を磨きながら、問いかける。
「……この前来てた警察の、徳永だっけ、あの人とはとちゃんってどのくらい仲いいの? 写真、はとちゃん抱きついてたじゃん」
「とくながさんはね、んーっと、おなかの手術のあとからだから……すごく前、10年いじょう前から、ぼくに会いにきてくれるの。入院したり、退院したりすると、よく来てくれる。いつもお花くれるの。きくのはな」
菊?
普通、病院の見舞いには墓前に供えるような花は贈らなくないか? それとも、仏花とはまた違う種類の菊なのだろうか?
「うれしかった。ぼくに会いに来てくれる人なんて、とくながさんだけだったから……。病院でお花そだてて、ありがとう、ってわたしたけど……いらないって、すてられちゃったの。でも、また会いに来て、お花くれて、ぼくがあぶない人だから見に来てやってるんだって、おこって。それが、ほんとにうれしかったの……とくながさんがいなかったら、きっとまだ病院にいたか、自さつしてた。きらわれてるのはわかってるけど、大切な、お父さんお母さんみたいな…………しゅうとさん、ぼくの話、つまんなかった? かお、こわくなってる。ごめんなさい」
俺の顔を見て、はとちゃんは話を切り上げてしまった。そんなにおっかない顔をしてるのか。聞きたくはない話を、それでも必要だと思って苦虫を噛み締めるようにして聞いただけなのだが。
「ん、ごめんごめん、はとちゃん。……俺ね、たぶん嫉妬してるんだ。はとちゃんは、俺が女の子を抱きしめてる写真見たら、どう思う?」
「……うらやましくて……かなしい」
「そう、そうだろ。俺もさ、刑事さんじゃなくて……俺に、俺だけにああいうことをして欲しかったんだ。はとちゃんが大好きだから」
眼鏡をかけ直し、はとちゃんをじいっと見つめて微笑むと、はとちゃんは照れたように口元を手で覆い、ふにゃふにゃした動きをする。
「……とくながさんも大切なひとだけど、ぼくのいちばんは、しゅうとさん。しゅうとさんのいちばんには、きっと……ぼくなんかじゃなれない、けど、でも、それでも、いいの……ぼくも……大好きです……」
そう言って、赤面しながら俺をぎゅっと抱きしめる。
今度は花を買って贈ろう、と決める。
「……はとちゃん、ココア飲んだらさ、お尻綺麗にしてきてよ。トイレの蓋の上に、はとちゃんに着てほしい物を置いたから、お着替えしてね。着方分からなかったら、教えるね」
スーツを脱いで、黒い柔らかい上下に着替える。とはいえ、部屋を出る用事があるから適度に見た目には気を使った。開放感と、これからのひと時への期待で胸が鳴る。
ダーツをおもむろに投げると、集中力が高まっているのか、ブルに突き刺さる。おっ、と独り言が漏れると、トイレの方からもはとちゃんの声が聞こえてくる。
戸惑いの声だ。
トイレから出てきたはとちゃんは、女物の薄緑色の下着の上下に黒いストッキング、その上に透け透けのモノトーンのベビードールと、下が透ける薄い素材のミニエプロンを腰に巻いている。上下合わさると、えっちなメイドさんみたいだ。
「……エプロンの位置ちょっと高すぎだね。もう少し、骨盤が全部隠れるくらいの高さに……」
「そ、そしたらおなかが」
「ストッキングで下半分は隠れてるじゃないか。ね、ちょっと下げるよ」
相変わらず腹の傷を恥ずかしがっているが、この衣装を着る事自体は大丈夫なあたり、不思議だ。スカート履いてないから、お尻の方はストッキング越しに下着が丸見えなんだけどな。
「うん、可愛くなった。へへ、試しに俺の事、ご主人様って呼んでみてよ」
「……ご、ごしゅじんさま……?」
ムラムラとした感覚が湧き上がり、今すぐベッドでご奉仕させたくもなるが、今日することはそれではない。
俺ははとちゃんの手のひらに、500円玉を握らせる。はとちゃんはキョトンとして俺を見つめる。
「メイドさんにお仕事だよ。この格好のまま、一階の自販機の……そうだな、コーンポタージュがいいかな。コンポタをひとりで買ってきて」
「えっ……こ、このまま、おへや、出るの? み、見られたら、どうするの……?」
「エレベーターだと誰かと鉢合わせしちゃうだろうね。階段で降りた方がいい、ここは4階だから、それでも誰かと会うかも」
「む、むりだよ……いっしょに行こう……? いっしょだったら、女の人とあっちゃっても大丈夫……はずかしいけど……」
「……これははとちゃんのためなんだよ? はとちゃんが、もう少し楽に生きていけるように、訓練してあげるんだ。ひとりで頑張ってみないか? な?」
「そうなの……? ん……やってみる……」
ちょろいな。
2割くらいは本当だけど、あとは俺の私利私欲だ。
はとちゃんは顔だけ扉から出しキョロキョロと通路を見渡し、恥ずかしがりながらも急いで階段の方へ進んでいく。
俺はエレベーターで悠々と先回りし、見つからないように気をつけながら自販機が見える物陰に身をひそめる。
やがて、うっすら瞳に涙を浮かべながらはとちゃんが階段を下りてくる。お腹を庇うように前かがみで手で隠している。
エレベーターの前に人が待っているのを見つけ、あわてて身を隠し、エレベーターが上がっていったのを見届けると、女の子っぽい走り方で自販機の前まで到着する。
3つある自販機で、コンポタが入ってるのは右2つ。赤い自販機にお金を入れ、どれか探している。たしかそっちの方のコンポタのパッケージはオシャレだけど英語が大きくて、はとちゃんには若干しんどいかもしれない。
誰かが通ってしまうかもと常に焦っていて、だけど見つけられず、しまいにはへなへなとへたりこんで、泣き出してしまった。
頭の中ではじめてのおつかいのテーマソングが鳴り出して、笑いが止まらない。
俺ははとちゃんに駆け寄って、持ってきた薄桃色のファーコートを背中にかける。
「いいとこまでがんばったね。えらいぞ。正解はこれだよ。……読めないか。カタカナ小せえな、これ。ユーザーフレンドリーじゃねえな。絵で分かるか、とも思ったけど。俺も同じの買お」
小銭を入れなおし、もう一つ温かい黄色い缶を買う。缶をまじまじと見つめ、はとちゃんは涙目で苦い顔をしている。しゃがんで、はとちゃんと目線を合わせる。
「似合うね。はとちゃんにあげようと思って買ったんだ、それ。前閉じたら、恥ずかしくないだろ? 寒さも和らぐ」
前を閉じてやると、下にやらしい格好をしているようには見えなくなった。骨張った膝もストッキングに覆われて、目立たない。
「……とってもどきどきして、わかんなくなっちゃった……。コート、あったかい、けど……高そう……」
「大したことないよ。気にしないで。……コンポタ、せっかくだからお外の公園で飲もうか。すぐ近くだから。立てる?」
髪を撫でて、手を差し出す。うん、と手を取り、缶で温められた指がきゅっと握り返す。
何の警戒も無い瞳に、笑みがこぼれる。
自動ドアが開いて、暗い夜道の人影を確認する。公園にも、人の気配はなさそうだ。
さて、お膳立ては整った。
はとちゃんは事件の記憶が無いというが、状況からして、はとちゃんは風呂場から飛び出して裸で徘徊して、おそらくは外で遊んでいた女の子を見つけて、そのまま無理やりねじ伏せ、乱暴に強姦したのだろう。
記憶が無いのなら、俺が上書きしてやる。
塗り潰して、塗り変えてやる。
これから俺は、はとちゃんを野外レイプする。
外で裸にして、嫌という程、体感させてやる。
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