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ストレス
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結局、谷村からの連絡はないまま、数日が過ぎた。
同僚から聞いた話では、課長には、暫く休みたいと、話があったらしい。
医者の見立てでは、身体に異常はないらしく、目眩や頭痛の原因は、恐らくメンタル面の問題だろうと言われたそうだ。
一時的に、過大なプレッシャーや、ストレスがかかったことが疑われる。
―過大なストレスって、何だよ?
そりゃ、現代人なら誰しも、多少はストレス位、あるだろ?
プレッシャーだって!?
課長はなかなか出来たヒトだし。俺だって、同僚だって、もう何年も面倒みてるし。励まして、労って、御互い支え合ってきた。
ストレスどころか、円滑な人間関係と完璧なチームワーク。…コレって、明らかに恵まれてるだろ?
あー。後は、女関係か…。
知らない内に、ヤヤコシイのに関わっちまうんだって、何度かボヤいてたよなぁ。
『嫁』
ふとあのワードを思い出した。
そういや、アイツもそろそろ、そーゆー歳だしな。
母親からのプレッシャーとか、同級生の結婚式とか、そんなことも、引き金になったんかもしれん。
―おい、まさか!
惚れた女を捕まえ損なって、心折れちまったのか!?
何だよ。
アイツ、そんなに弱っちいヤツだったのか。
「ちっ!情けねーなぁ。」
小さな呟きを聞き咎めたのか、隣にいた派遣女子が、珍しくツッコンできた。
「山中さん!谷村さんが苦しんでる時に、デリカシー無さ過ぎですよっ!!」
「…そうか?」
「私、たまに山中さんが、ブルトーザーみたいだと感じることがあります。」
甲高い声は震えて、小さかったが、涙ぐんだ目と相まって何だか、妙に刺さった。
―ブルトーザーねぇ。
ガキの頃は、カッコいいと思って、憧れたっけ。
そういや、ブルトーザーがいるような工事現場なんて、もう何年も見てねぇな。
俺はふと、山に囲まれた故郷を思った。
こういう都会は、コチャコチャと手直し工事ばっかで
立看板か、赤いライト振って誘導するオッサンしか記憶にねえな。
嫌になる程数字を見たあとは、真っ直ぐ部屋に帰る気もしねえし、適当に何処かで呑むことにした。
「どこにすっかなぁ。」
こういう時はいつも、隣にいた谷村に訊いてたんだな、と
気付かされて、何だか妙な気分になった。
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