アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
報告
-
谷村が辞めて一月ほど経った頃
派遣女子から妙な視線を感じるようになった。
―ブルドーザーだったか?
またデリカシーの無いことをウッカリ口走ったのかと、気になって
なるべくコイツがいる時は無言でいることを心掛けていた。
そんなある日。
「私、この前、谷村さんを見かけました。お洒落なカフェで素敵な人と愉しそうに話してましたよ。」
そんな報告をされた。
「へえ。」
―身体、治ったんだな。
俺は少しホッとした。
「それだけですか!?」
一気に派遣女子のボルテージが上がった。
「は?」
―だけって、どういう意味だ?
首を傾げた俺に向かって、派遣女子が叫んだ。
「私、山中さんを見損ないました!!仕事辞めちゃう位、傷付けて追い込んだ相手に対して一度も謝罪しないって、あなた一体何様ですかっ!?」
―追い込んだって?
俺が谷村をか。
そりゃあイツの話だ!?
そんな事実があるとすれば、謝らなくもない。
だが、谷村は俺に何も求めてない。だから、黙って辞めた。
むしろ、今更俺が謝罪なんてしようものなら、もっと拗れてしまうんじゃないか?
「もう、いいです!」
憤然と出ていく背中を、ボンヤリ見送った。
―たしか、こんな噛み合わない会話をした後、嫁にしたい女が指輪を置いて、出てったんだったな…。
去るものは追わず。
逃げてったヤツをわざわざ追っ掛ける程、俺は暇でも、阿呆でもないつもりだ。
谷村が新しい職を見付けたように、我が社へ入社した人間だっている。
岡山に行ってた和泉だって、戻ってきたしな。
こんなのは、単なる選手交代だ。
意味なんかない。
別に、そんなに騒ぐほどのことじゃない。何処でもしょっちゅうあることだ。
…そうだろ?
俺は自分に言い聞かせながら、夜道をひたすら歩いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 13