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-柳原side12-
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「ヒロくん……かな?……随分久しぶりだね。」
電話口から聴こえる優しい声の主は、援交の時一番心を許していた男性。その当時に使っていた“ヒロ”という名前も今は呼ばれることがないため、何だか変な感覚だ。
「今お話大丈夫ですか。」
「……急に改まっちゃってどうしたの?普通に話してくれていいよ。その……あの日のことは気にしてないからさ!寧ろ連絡を貰えて嬉しいよ。」
“まもる”さんとあったのは、片井くんにホテル街から連行された日が最後だったため、何となく複雑な気持ちだったが、当の本人は全く気にしていない様子で話を続ける。……ちょっとだけほっとした。
「あの……無理承知でのお願い。……1週間でいいから匿ってくれない?悪いことしたとかじゃないんだけど……ちょっと家にも学校にも行けない状況なんだ。嘘っぱちだけど、正当な理由を学校にも話してるから多分捜索はされない。もう前みたいな関係は作らないし、とりあえずほっといてくれていいから……どうか、お願いします……。」
「それは僕の家でってことかい!?……参ったなぁ。実は僕、一人暮らしじゃなくてね。」
いつ電話しても直ぐに駆けつけて付き合ってくれていたまもるさんに、まさか同居人がいるとは想像もしていなかったため、俺はアングリとしてしまった。
「えっ……恋人!?もしかして家庭持ちとか?」
「いやいやいや!!そうじゃなくて……その、ちょっと従兄弟を預かってるんだよ。その子がいて構わないなら大歓迎だよ。ただ、ヒロくんのパートナーくんは……いいの?」
恐らく片井くんの事だろう。……さすがにあんな場面見られちゃ、付き合ってること察せられてるよな。
「余計な心配をかけたくなくて……すみません。実は体調があんまり良くないんだ。」
「それなら尚更心配だ。とりあえず落ち着くまでうちで良かったらおいで。今日は丁度休日なんだ。いつも待ち合わせてた駅まで車を回すよ。」
「ほんと!?……ありがとう。こういう時ばっか頼って、都合良い奴で、ごめん。」
そう言うと、まもるさんは困ったようなため息をついて話し始めた。
「初めからそういう関係だったし、ヒロくんに恋愛感情はないから気にしないで。……僕からも申し訳ないけど、従兄弟に今までのことは内密にお願いするよ。」
「わかった。……じゃあいつもの駅で。」
援交をしていた時によく言っていた一言。何も悪いことはしていないはずなのに、心がざわつく感じがした。
「片井くん……嘘ばっかついてごめん。今は俺のせいで受験勉強に響かせたくないんだ。……好きだからこそ、頼れないんだよ。」
だから今だけは、少し距離を置かせて。
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