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ー柳原side14ー
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それにしても、まもるさんってめちゃくちゃ金持ちなんだ……と、この短時間で改めて感じている。車は外車の左ハンドル、住んでいるマンションはかなりの高層で、顔認証のオートロック。極めつけは、マンションの中にレストランやクリニックがあり、もはや高級ホテルに住んでいるようなもんだ。
確かに、援助交際をしている時も、腕時計やアクセサリー等、装飾品は全てブランド物で、俺が欲しいものは何でも買ってくれていた。年上とはいえ、まだまだ若い年齢でここまでの金持ちとは……。一体何者なのかめちゃくちゃ気になる。
「お風呂とか……ジャグジーだったり……いや、まさか露天風呂?」
「っぷくく、ヒロ先輩も思うっすよね。俺もたろにぃに同じこと聞いたっす!」
ついつい独り言が漏れてしまっていたようで、俺は慌てて口を塞いだ。……まもるさんは気がついていないようだ。
「さてと、もうすぐ着くからね」
エレベーターに乗り込むと、笑顔で25階のボタンを押す。……おいおい、ここ何階建てなんだ。何だか違う意味で、血の気が引いていく感覚がした。
「お、おじゃましまーす」
玄関に足を踏み入れると、部屋の奥から静かに白髪の中型犬が出てきた。……この家のスケールで犬まで出てくるとは。
「ヒロくんは犬、大丈夫かな?大人しいから何もしないと思うんだけど」
「全然大丈夫!可愛いね」
その犬は、まもるさんが言った通り、かなり大人しく、人見知りもしないようだ。久しぶりにふわふわの毛並みを触って、震えていた手が少し暖かくなったような気がした。
「この子は健太郎って言うんだ!俺はケンケンって呼んでる!あだ名でもちゃんと反応するんだよー!ケンケン~ほら、偉い偉い!!」
「えと……まもるさんも確か、たろにぃ、とか?太郎系の名前なの?」
「ああっ恥ずかしい……。それもかいとが付けた変なあだ名なんだ。僕の本名は孝太郎だよ」
「だからたろにぃね……。俺は、真尋。呼び名はそのままでいいよ。」
お互い本名も知らない他人同士で、いきなり家に泊めてもらっているというのに、かいとくんはその事について、全く首を挟んでこない。かいとくんもまた、俺と同じような付き合いをしているのか?とも思ったが、まもるさんは絶対家に相手を連れることがないと言っていたから、おそらくそれは見当違いだろう。……良くも悪くも他人に興味が無いタイプの人間なのかもしれない。
「さて、夕飯は昨日の残り物だね。かいと、用意お願いしていいかな?」
「俺もやりま……」
そう言いかけると、かいとくんとまもるさんが揃って俺をもう一度椅子に座らせる。お客様は動かない!病人は動かない!と、仲良く声を揃えて言われてしまった。なんだか申し訳ないな。
「飲み物は飲めそうかな?一応、カロリーが摂れるプリンも買ってみたんだけど」
「そうですね……昨日は食べたもの全部吐いてしまったから、そろそろ食べないと。」
食卓には、昨日の残りと言っていたが、かなり栄養豊富そうなおかずが沢山並べられた。……本当にいい匂いがするのに、俺は何故かその匂いさえも受け付けず、胸の辺りがモヤモヤとし始めた。片井くんのお弁当を全て吐いてしまったことがフラッシュバックし、さらに血の気が引いていく。
「……っ」
「……ヒロくん?気持ち悪い?トイレに行こうか」
「ごめんなさい……っ、ほんと、に……っ」
食べ物に対する過敏さは日に日に酷くなっていて、流石の俺も焦燥感を感じる。それを感じ取ってか、まもるさんは昔のように優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。
「食べられないのは悪いことじゃない。そんなに責めないで。……今はカロリーの摂れるドリンクだってあるから、しばらく様子を見ようね。大丈夫。」
「……あり、がとう。」
「あっずるい~!俺も!!大丈夫のハグね!」
そう言ってかいとくんも俺の背後から抱きしめてくれた。絞め技の様に力の強いかいとくんに、2人で突っ込んだり笑ったりしていると、少しずつ胸のモヤモヤが落ち着いてきた。
「とりあえず、うちでいる間は無理はしなくていい。悪いな…なんてことも考えなくていいから。今はゆっくり休もう。いいね?」
「……はい。」
「とりあえずさ、DVD観ない??正義のジョッカーって言うんだけど!!俺の大好きな悪役が主人公なんだ!凄いでしょ!!」
まもるさんはまた始まった……と言って、困った表情でかいとくんを優しく叱る。従兄弟と言っていたけど、なんだか本当の家族のような温もりを感じて、居心地がよかった。きっとそれはかいとくんも同じだから、ここに居るのだろうなと思う。
ここに居る事情を俺からは聞かないし、かいとくんもこちらに何も聞かないから、程よい距離感があって安心する。
……片井くんに嘘をついてしまったことは後ろめたいけど、今はどうか甘えさせてください。
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