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-柳原side2-
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それからどれ位経っただろうか。机に伏せて寝ていたとは思えない程ぐっすり眠ってしまっていた俺は、自身の髪に違和感を覚えてそっと目を開けた。
ポンポン、と一定のリズムで髪を撫でる大きな手。寝ぼけた頭でぼんやりとその心地よさに身を委ねていたが、その手の正体が片井くんだとわかった瞬間、ガバッと思いっきり顔を上げた。
「うわっ…び、びっくりした。すまない……起こしたな。」
「ああっえっと、いや…びっくりしたのはこっちっていうかその……き、気持ちよかったよ。まぁまぁ。」
たどたどしいやりとりに、今更恥ずかしくなってきて、俺はもう1度机に伏せた。…片井くんがたどたどしいのはまだわかる。散々身体を売っていた俺がこんなことで照れてるとかマジで有り得ない。こんな気持ちは初めてだ。
高鳴る鼓動を誤魔化すように伏せていると、片井くんは黙ってしまった。どんな顔をしているのだろう…と少しだけ顔を上げると、あまり面白くなさそうな顔をしている。
「まぁまぁってなんだよ。」
「あれ?怒っちゃった?」
「……別に。」
不貞腐れた顔でそう言い放つと、帰る準備をする、と頭の上に置かれていた手が離れていき、咄嗟に俺も立ち上がってその手を掴んでしまった。
「待って!あ…えっと、その…ちゃんと気持ち、よかったからさ……もう少し、撫でててよ。」
「……ん。」
今度は横に座るよう片井くんに促され、さっきよりもぐっと距離が近くなった。
大事に壊れないように、割れ物を触れるような優しい手。安心感、というよりは味わったことのない温もりに、こんなに幸せでいいのだろうかと胸が熱くなって、気がつけば俺は目の前が滲んでいた。
……俺ってこんなに涙もろかったっけ。俺は本当に壊れちゃったのかもしれない。
「柳原!?……おま、どうした?」
「ははっ……どうしたんだろ。なんか、すごい…っ溢れてくる。……片井くんと付き合ってから変だよな、俺っ。」
急に泣き出した俺を見て、片井くんは徐に俺を抱きしめた。
「……お前が感情的になると、なんだか俺もおかしくなるんだ。頭が、ぐるぐるする。」
「そっ、か……っ、そっか。じゃあお互い、責任取らないとね。」
抱きしめられた手がフッと離れて、今度は俺の顔をじっと見つめる。目までかかる髪の毛を指でそっと掻き分けて、切れ長な目で俺を見つめた。
「片井くん……。」
「……なんだ。」
「……好き。っ、すきすぎて、怖い。」
「お前な……ほんとに……っ。」
少し焦った掠れ声。急に俺のマスクを外したかと思うと、それを発する唇が近づいてきて、俺は頭が真っ白になった。
……片井くんからの、初めてのキス。1、2回啄むように優しく、その後は俺の顎を持ったままクッと角度を変えて、長い長いキスをした。
片井くんのくせに案外上手くて、ちょっとムカつく。
「……っん、ずる、いよ。こんなっ不意打ち…。」
「しょっぱい。ほんと泣き虫だな、お前。」
「誰のっ……せいだと。」
恥ずかしさを紛らわせるように、制服の裾で目を擦っていると、腫れるからやめろと手を取る片井くん。急に恋人らしい雰囲気が漂って、くすぐったい。片井くんもそう思っているのか、少し頬を赤らめて、俺の手を優しく握った。
「柳原、今日バイト休みだよな?」
「うん。明日も夜シフトだし空いてるよ。」
「今日、俺のうちに……泊まるか?」
「……えっ。えっ!?」
急展開過ぎていまいち頭が追いつかない。それはどういう意味での泊まりなのだろう…ともう一度片井くんの方を見ると、恥ずかしそうに頭を掻きながら、フッと視線を反らせた。
……これって、そういう、ことだよな??
「お、おとーちゃんは?!あ、あと郁ちゃんもいるじゃん??か、郁ちゃんはいいけど……いやっよ、よかねぇわ…良くない、色々とっ…。」
「柳原落ち着け。……その、父親は出張で居ないし、郁も友達の家に泊まって受験勉強に行っているんだ。……うちには、誰もいないから。」
「色々急すぎて、頭…ついていかねぇよ、馬鹿っ…。」
慌ててマスクをしたが、耳まで熱いのがわかる。それでも離すことが出来ないこの手が答えだから、気づいて欲しい。
「今日のお前、なんかすごい…か…い。」
「えっ?今なんて??」
「なんでもない、い、行くぞ。」
語尾が小さすぎて聞こえなかったけど、片井くんまで耳が真っ赤になっているのは確かだ。3年の校舎は誰もいないとはいえ、急に誰が出てくるかわからないのに、片井くんは俺の手を握ったまま教室を出る。
今までハグ止まりだったのに、“初めて”の波が俺を襲う。……このまま片井くんの家に行ったらどうなってしまうのだろう。今日は本当に死んでしまうのではないかと思うくらい煩い鼓動に、俺はぎゅっと胸を押さえた。
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