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蒼羽side
ヘラヘラして、底の見えないやつ。
終始笑顔だからだろうか、よくそんなことを言われる。
他にも、感情が欠落してるとか、人間味がないとか。
言われる言葉を気にしたことはないけど。
「すみませーん。モデルのお仕事とか、興味ありませんか?」
高い声に呼び止められ、ぴくっと笑顔が一瞬凍る。
横目で見ると、若い女が名刺を出しながら、僕の肩に手を置いた。
「興味ない。触んな」
「えー。そんなこといわずに。お兄さんすっごく綺麗だから、間違いなくスターになれますよ!」
突き放すように冷たい声で言ったというのに、この女はめげずにキモい脂肪の塊を押しつけるように腕を抱きしめようとする。
ああ、もういっそ、殴ってしまいたいとさえ思う。
「さわんなっつってんだろ。ブス」
強く手を振りほどくと、さすがに女の力では掴んでいられなかったのか後ろによたつく。
相手はもう泣きそうで、吐き気がする。
そのまま、気にも留めずその場を去った。
_______女は、この世で一番嫌いだ。
僕が感情が欠落してるというならば、女という生き物は感情でしか生きられないものだと思う。
弱くて、醜くて、汚らわしい。
毎日繰り返される母からの暴力に、僕は全く笑いも怒りも泣きもしない子供だった。
男に依存しなきゃ生きていけず、その男の態度一つに左右されて、自分より弱い僕にぶつける。
挙げ句、捨てられて、宙ぶらりん。
「……っ」
一瞬、過去の映像が蘇り、こみ上げた吐き気に、口を押さえた。
女に触られた方が、嫌に気持ち悪い。
携帯を取り出し、一番相性のいい草薙に明るい声で電話をかけた。
「もしもし草薙?今日行くから、あけといてねー。拒否権とかないから」
電話の向こうからは、僕を嫌いとも好きとも思えないいつも通りの無感情な声で、はいはいと聞こえた。
依存もしないし、されない。
気持ちのいいことだけをする関係って安心感がある。
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