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高3夏の憂鬱
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「ルリなら、将来のことでこんなに悩まないんだろうな」
2時間前、雅人にふとそんなことを漏らした。
進路希望のプリントと睨めっこして思わず唸る。
母さんは大学にまで行かせたいと言ってくれたけど、特にやりたいこともない俺が無駄に学生生活を伸ばすのは金の無駄な気がする。
「雅人はなんで教師になったの」
ごろんとソファに寝転がり、隣に座っていた雅人の膝に頭を乗せた。
「んー、俺は施設育ちだから、年下の子の勉強見ることも多かったしね。まぁ安定した職業だからって理由が正直大きいよ」
でも、その仕事につけたのは、特待生の枠を勝ち取れた学力があってからこそだ。
俺は今でこそ平均くらいにはなったけど、2年までは進級も怪しいくらいの学力だったし、公務員なんて無理だろう。
普通のサラリーマンでいいんだけどな。
初任給が高卒と大卒では違うらしいけど、それって長年勤務していたら、足並み揃うんじゃないんだろうか。
それなら、何百万という大学の費用はもったいない気がする。
ルリはどうするんだろう。
正直、ルリが進学するなら同じ大学に行きたいし、就職するなら同じところで働きたい。
こんなこと大人に言ったら、社会なめんなって怒られるだろうけど。
でも、学年主席のルリが俺が手を出せる大学を選ぶことはないだろう。
そもそも、あいつなら本当に何にでもなれちゃうんだ。
ルリと街を歩いてると、よく芸能界に興味はないかと声をかけられる。
前から容姿は申し分なかったし、成長の止まった俺をおいて、ルリは身長も少しずつ伸びていた。
月城と付き合ってから、あの色気がうつったように増していって、周りはより一層ルリを放っておくはずがなかった。
ルリは芸能界に興味はないと言うし、ルリの長所は容姿だけではなく、頭の良さや運動神経と、むしろ短所を思いつく方が難しいとさえ思う。
俺も、よく声をかけられるから顔は、悪くはないんだろうっていい加減自覚してきたけど、他の長所はない。
どんどん、どんどん置いて行かれるみたいだ。
母さんは容姿を十分活かしてると思う。
高校三年の初夏。
未だに進路のことで悩んでるなんて、手遅れな気がする。
ルリとクラスが離れて、周りが進路のことばかり話してて、正直焦る。
2年で時が止まってくれたら良かったのに。
「ルリと同じ大学行きたい」
「は?」
俺の髪を撫でていた雅人の手が止まる。
一言聞き返されただけなのに、不機嫌なことがダイレクトにぶつけられて、胸がぎゅっとなった。
「お前、いつまでそんな幼稚なこと言ってんの?」
本気でそんなこと思ってない。
周りについていけなくて、焦って、いっぱいいっぱいだから、つい弱音をこぼしてただけなのに。
雅人にまで冷たい声を出されて、最近溜め込んでいたどこにもぶつけられないストレスが涙になって込み上げてきた。
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