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クリスマス 冬夜、ウリエラ
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「ねぇ、ここ…」
僕が連れてこられたのは、繁華街にある大きなホテル。
「此処で待ってて」
そう言われてロビーに1人のこされる。遠慮がちに腰掛けたソファはすごくふかふかで、それが高級なものなんだって分かる。
「ウリエラ、こっち」
戻ってきた冬夜が、また僕の手を引いて今度はエレベーターに乗る。キーをかざして押したボタンは最上階以外の何物でもない。
エレベーターも早くて、耳がおかしくなりそう。
ほんの1分もかからないうちに最上階へとついてしまった。
冬夜が開いてくれたドアから見える室内は、僕が知ってるホテルと違う。
天界のホテルしか使ったことがないけれど、下界も天界も、文化や建築はほとんど変わらない。というか、天界の文化を下界に広めたのだから、大きな差があったら困る。
部屋に入ると、僕は物珍しさに部屋の中の探検を始めた。
たった2人で使うには多すぎる部屋の数と、高級そうな調度品達。
「何やってんの、こっち来いよ」
「ごめん、すぐ行く!」
ドアの向こうからかけられた冬夜の声はなんだか小さい。返事をして、ドアを開けても誰もいない。
そこには廊下が続いていた。
ただ少し行ったところのドアがひとりでに開く。びっくりして身構えるけど、その犯人は冬夜で。
駆け寄っていくと、中には豪勢な食卓が並んでいた。
「わぁ……」
「どうぞ、プリンセス?」
「ありが…とう?ってなんでプリンセスなのさ!」
椅子を引いてくれた冬夜は本当に王子様のようで、すごく格好よかった。
「ウリエラはシャンパンでいいな?」
促されるままに黙って頷いた。
用意されていたグラスを僕に手渡す。
「メリークリスマス」
そう言ってグラスを傾ける冬夜を、僕は直視できないでいた。
このまま見てたら冬夜以外のすべてを、美しいと思えなくなってしまいそうで怖かったから。
談笑しながら食べる豪華なご飯もとても美味しくて。お腹いっぱい食べて、2人ソファに沈む。
「今までこんなイベントどうでも良かったし、浮ついてる奴らはおかしいと思ってた。でもウリエラ、今年は特別な」
胸のあたりがきゅうってなる。
今まで僕は冬夜といて初めてなことばっかりだった。全部冬夜が知ってて、それを与えてもらうばっかりで。
でも、今日は違う
冬夜の初めてを、僕が貰えた。2人の初めてを、分けあえた。
「あー、ウリエラ、これが俺からのクリスマスプレゼントってことで、いい?」
不安げに聞いてくる冬夜のその表情も新鮮。しかもこんな素敵なプレゼントを必死に考えてくれたんだと思うと嬉しい。
「もちろん。っていうか、十分すぎるくらい幸せ!」
ふわっと顔が綻ぶ。
「よかった。ところでさ、ウリエラも俺になんかちょーだい?クリスマスプレゼント」
と言われてギクリとする。実際何も用意できてなかったから。
「ほら、早く。俺に用意させといて自分はないとか言わないよな」
意地の悪い視線を向けてくる冬夜。
あぁもういいや
ちゅ
「クリスマスプレゼント!もういいでしょ!!ってんむぅ……ふぁ」
僕がクリスマスプレゼントなんてやめとけばよかった。
後悔してももう遅い。
次の日はチェックアウトギリギリまで、ベッドから動けなかった。
___fin___
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