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深夜。深い夜。
まさに深い闇に覆われた夜。
人も街も眠りにつき、窓の外からは遠くに車が走る音が時折聞こえる程度。
風も雨も無く、静かな夜。
その静寂を乱したのは悲鳴。
悲鳴と言っても小さなもので、乱すと言っても微かなもの。
しかし、それを耳元で聞いた男にとっては眠りの底から引き上げられるのに十分な音量だった。
男がベッドライトをつけると、闇が柔らかく追い払われる。
温かみのある黄色い光の中に浮かんだのは悲鳴の主の苦悶の表情。
「クレト」
汗と涙で濡れたあどけない顔を男はタオルで拭きながら、彼の名を何度も呼んだ。
クレトの隣で眠っていた男の名はレオン。
クレトよりだいぶ年上の細身の男だ。
今夜の空のように黒い髪と黒い瞳をした彼が、少々乱暴に汗で濡れたクレトの髪を拭く。
「クレト、また怖い夢見たのか」
ぶっきらぼうな言い方だがその表情からクレトを心配しているのが良く分かる。
ようやっとクレトが目を開けると彼はレオンを見上げた。
うなされた直後で呼吸も荒いクレトは涙で潤んだ瞳でじっとレオンを見つめる。
「まだ夜明け前だ。今日は学校行くのか?」
まだしっとりとした髪を撫でつけるようにしながらレオンが問うと、クレトは無言でうなずいた。
「なら、まだ寝とけ」
再度クレトが頷く。
そして唇を噛んで、目を伏せた。
泣きもせず、わめきもせず、クレトはもう一度小さく頷いた。
「ほら」
レオンがクレトを包むように毛布を掛け直すと、子犬が母犬にするようにすり寄る。
「寝ろ」
レオンの胸に鼻先をつけながら、クレトは再び頷いた。
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