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叫び声を聞きつけて藤城悠達が部屋へ入ると、九十九昴が床にしゃがみ込み、その足元では井端甫が血を吐いて倒れていた。
「甫‼︎‼︎‼︎‼︎」
向田篤志が駆け寄っても反応は無く、呼吸も浅い。今にも止まってしまいそうなその弱々しい呼吸音に、向田篤志は冷静さをうしなっていた。
「昴、どういうことだ?」
「わからない。さっきまで普通に眠っていたんだ。そしたら、突然激しく咳き込んで床に蹲ったと思ったら、血を吐いて倒れて…」
動揺を隠せない九十九昴を抱きしめると、有村春一と兵藤晃に水を大量に運んでくる様に指示を出す。
「何か毒物を摂取した可能性が高いな。…………でも、どうしてこんな時に、いつ毒物を摂取したんだ…」
「俺が、やる。彼を助ける。」
突然、抱きしめる藤城悠の腕から飛び出し、部屋を出て行ってしまった。
「甫‼︎‼︎‼︎…しっかりしろ‼︎」
部屋に有村春一と兵藤晃が戻ってきたのを確認すると、取り乱す向田篤志を井端甫から引き剥がし、指示を出す。
「水を大量に飲ませて、胃中の物を全て吐き出させろ。取り敢えずそれで様子を見る。」
処置が始まってから、5分程経った頃に九十九昴は何やらたくさんの荷物を抱えて部屋に戻ってきた。
「そのまま処置は続けて‼︎あとは俺がなんとかしてみせるから。
………大丈夫。必ず助けるから。」
そう言うと、九十九昴は井端甫の血液を採取し、実験道具一式の様な物を出してきて作業を開始した。
それから1時間後、胃中の物を全て吐き出した井端甫が薄っすらと目を開いた。
「甫‼︎」
駆け寄る向田篤志に微笑む姿はとても弱々しく、消え入りそうな儚さを纏っていた。
「毒物を飲んだ記憶は?」
有村春一がそんな中でも淡々と聞いて行く。
「貴方方に、会ってからは、何にも、くちにして、いない…。ここへ来る前、近くのパン屋で、パンを買って食べた、くらい…だと思う。」
「変な味とかしなかった?」
「はぁっはぁっ、しなかった、と、思う。」
それだけ答えて、井端甫はまた、意識を手放した。
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