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「目が…見えない…。」
毒に長時間侵され続けた井端甫の体は、命の代償としてか視力を失うこととなった。
「全く見えないのか?」
向田篤志の言葉に井端甫は微笑む。
「見えないよ。でも、ちゃんと貴方の顔が、身体が、全てが、僕のこの目に焼き付いている。命が助かったその代償だと思えば、こんなの安いもんだよ。」
もう井端甫の瞳にその身を映すことの出来ない事に眉間に皺を寄せるが、その瞳には直前に映した向田篤志の表情が、愛の言葉を呟いた時の愛しい口元が、焼き付いている。
「こんな僕を…愛してくれる?」
井端甫の何処か不安を押し込めたようなその言葉に、向田篤志は思わず彼の身体を抱きしめた。
「当たり前だ。どんな甫でも、俺は愛し続ける。…愛してる。」
********
九十九昴は、倒れてから2時間程で目を覚ました。
「あれ…俺…寝ちゃっらの?」
眠そうに呂律のまわらないその言葉に優しい微笑みを浮かべながら、藤城悠が九十九昴の横になっているベッドに腰を掛ける。
「おはよう。…それから、お疲れ様。もう体はいいのか?まだ寝ててもいいんだぞ?」
そっと髪を撫でる藤城悠の手に気持ち良さそうに、まるで猫のように擦り寄る九十九昴。
「ん…大丈夫。悠…あれからどれぐらい経った?甫さんは?」
大丈夫と言いながらも、今にも眠ってしまいそうな九十九昴に肩まで布団をかける。
「そんな経ってない。まだ2時間ぐらいかな。
甫さんは大丈夫そうだ。今は篤志さんがそばにいるし。
お前はもう少し寝た方がいいだろう。何か空きっ腹に優しい物を作っておくから、目が覚めたら食べるといい。」
そう言って、そっと部屋を後にした。
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