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「俺たちについて知りたいの?」
「だってここの皆、謎多き人って感じだし。お世話になるのに何にも知りません‼︎っていうのはちょっと嫌かな。」
井端甫の考えにも一理ある有村春一は、自分たちについて教えられる限りを教えることにした。
「場所…変えない?」
有村春一の提案に井端甫は快く頷き、厨房の奥にある小休憩スペースへ入った。
広さの有り余っている『SUBARU』では、休憩スペースなどが多く取られていて、一度兵藤晃に「ここで働いているのはナマケモノか何かか?」と聞かれたことがあるほどだった。
「まず、何について知りたい?」
「ここは、情報屋がメインなんでしょ?」
「あぁ。」
「昴は薬作れるし、人の話を聞いて沢山情報を集めることも出来る。人から聞き出すのも得意で、凄い人なのはわかったんだけど、悠さんや春一さんにもそんな特技があるの?」
「あるにはある。けど、あいつは特別だ。」
有村春一の言葉に首を傾げる姿は、九十九昴よりも幼く見える。
始めて『SUBARU』を訪れた時の井端甫からは想像出来ない程に丸くなり、切羽詰まった状況からの脱出というのは人をここまで変えるのだと、有村春一は一人感心していた。
「あいつを見ていると、天才って言葉はあいつの為にあるんじゃないかってすら思えてくる。
ここの店長、情報屋の取り締まり役は悠がやっているが、本当のここの主は昴だ。
元のここの主は夏目直孝って言って、昴よりも抜きん出た本当に天才だった。
天才よりも天才って俺は何を言っているんだか…。
でも、昴も天才だが、直孝さんはもっと天才だった。そもそも、昴に情報処理のやり方から何まで叩き込んだのはあの人だ。」
夏目直孝はトップ大学を首席で卒業し、その後、大学時代に行っていた株で貯めたお金で『SUBARU』をオープンさせた。
大学時代、株のバイヤーとしてあらゆる組織の情報を収集し、成功したという実績があったからか、情報屋というあまり信用の無い職にも関わらず、オープンと同時に固定客が付き、順調に経営を行っていった。
そんな夏目直孝が唯一認め、『SUBARU』の後継として選んだのが九十九昴である。
「だから、あいつは天才なんだ。ここの主は天才にしか務まらない。直孝さんの頃からの客が今でも『SUBARU』の客であり続けるのは、昴がいるからだ。」
「そんな凄い人がいたんだ。そんな人に認められた昴も凄い。」
感心する井端甫に、有村春一は視線を落とす。
「でも、そんな昴と一緒に仕事してるんだ。悠さんや春一さんだってすごいんだろう?」
「悠は、交渉人としてはピカイチだ。あいつの交渉術に掛かれば、こっちがどんなに不利だろうが交渉を成立させちまう。
後は…体術とかそう言ったのかな。あいつとだけは本気で喧嘩したくない。
空手や柔道とかの黒帯は勿論、聞いたこともないような護身術や体術系の師範代を幾つも持ってる。」
「へぇ!凄い。悠さんに敵なしだ。」
「いや、そんな事もない。兵藤晃…あいつもまた別格だ。悠が唯一負ける相手、それが晃だ。まぁ、あそこまでいくと凡人の俺らからしてみれば体して差はないけどな。」
藤城悠と兵藤晃が兵藤邸で手合わせした時の惨事を思い出し、青ざめる。
「春一さん。あなたには何があるの?」
有村春一は少し考え込むと、机の上で閉じてあったパソコンを開いた。
有村春一の特技、それはハッキングだ。
「ハッキング?? それって犯罪じゃないの?」
多くの人が誤って持っている知識こそが、ハッキング、イコール、犯罪。というものである。
「ハッキングってのは、コンピューターを自在に操る事を言うんだ。これだから何も知らない奴は…。
お前が思ってるハッキングは、正式にはクライム・ハッキングって言われる類の事だろう。
俺は、不正に人のパソコンに侵入したりしないし、犯罪もしない。俺は列記としたハッカーだ。」
有村春一の強い主張に、パソコンへの熱意を感じる。
「そうなんだ。知らなかった。で、春一さんはパソコンで情報を集める事が出来るの?」
「まぁ、そうだな。色んな所から幾らでも情報は得られる。今時インターネットは情報の宝庫だ。」
「なんだ…あなただって凄いんじゃん。口が悪いだけじゃないんだね。周りが凄すぎるだけで、下にいる人の数の方が断然多い。」
「口が悪いは余計だ。」
「君達の事はよくわかった。今は、昴が主だって言ってたけど、直孝って人は今はどうしているのさ?」
井端甫の質問に、一瞬部屋の中が一気に冷えた様に感じられた。
「…………死んだよ。」
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