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『SUBARU』を出て、取り敢えず特にあてもなく歩いていた九十九昴と向田篤志は、メインストリートから一本入った裏道に来ていた。
「篤志さん。俺達は、ただDEDや直孝さんの情報が欲しいんじゃない。真実を知って、それから…復讐する事を目的としている。」
「…復讐…。」
九十九昴の口から出たその言葉に、違和感を感じざるを得ない。優しく、儚げで、美しい青年は純粋で、神聖で、光の様な印象を持たせる。
そんな彼の口で、復讐というこの世に蔓延る最も邪悪で、終わりのない闇のような正反対の言葉が紡がれた。
「『SUBARU』の皆は、DEDを見つけ出してこの手で、復讐を果たそうとする意思を持った者たちだ。
俺達は復讐の為なら何だってする。汚い事だってする。犯罪だって犯すかもしれない。
俺達は復讐に残りの人生を掛けたんだ。」
九十九昴の話から、彼が何を伝えたいのか、何を警告しようとしているのか、向田篤志はだいたいを予想していた。
それでも、九十九昴自身の口からその先を聞くことが大切なんだと思ったのだ。
向田篤志は、彼の瞳を真っ直ぐに見据えて話の続きを待った。
「…だからね、彼処は甫には会わないと思うんだ。俺達と居る事は、甫にとって良いことではない。貴方が甫の平穏を望むなら、尚更『SUBARU』には居ない方が、関わらない方がいいと思うんだ。
確かにこの間のあの時点では、うちで貴方たちを預かる他に方法は無かった。でも、俺は思うんだ。…結局『SUBARU』に居たら、裏の仕事になる。足をあらったヤクザに逆戻りさ。
目の見えない甫には酷な事だ。彼はとても勘がいい。俺達の事も薄々気づいているんだと思う。俺は友人として、彼には平和な道を歩んで欲しい。…今ならまだ間に合う。
兵藤さんに手配してもらって海外へ逃げて。…それが、甫の為だ。」
裏道はメインストリートと違って街灯が無いため、奥に進めば進むほど、暗くなる。
日が暮れ始めた時間帯であることも尚、道に影を落とす要因となっていた。
九十九昴がどんな表情をしているのかすらわからない程の闇の中で、向田篤志は目の前の青年に向かってはっきりと言った。
「断る。」
暗闇の中でも、九十九昴が驚き、顔を上げたのがわかる。
「なぜ?」
「甫と約束したからな。
あいつはお前のそばに居る事を選んだ。『SUBARU』に居る事を選んだんだ。
俺はただ、甫のそばに居られればいい。確かにあいつの平穏を望むが、あいつの望みを、願いを、意思を尊重したい。
だから、俺に何を言っても無駄だ。そういう話は直接本人にしてやってくれ。
…友人として、な。」
九十九昴は目を見開き、そして、俯いた。
小さく頷いたその仕草には、戸惑いを感じさせた。
九十九昴の周りには、自然と人が集まる。
復讐を望む一方で、大切な人達の平穏を願ってしまう。守りたいと思う。
そんな思いが、彼に重くのし掛かり、心を許した相手を遠ざけようとしたのだ。
ーまた、守りたい者が増えてしまった。
……これ以上は…
そっと、頭を撫でる優しい感触に顔を上げると、向田篤志が少し困ったような表情でそこにいた。
「心配するな。甫は、俺が何が何でも守ってみせるから。だから、あいつを彼処に居させてやってくれ。俺ならきっと、君たちの手助けも出来るだろうから。
…その代わりと言ったらおかしいかもしれないが、理由を教えて欲しい。君たちがそこまでして復讐を願う理由を…。DEDは、君達に何をしたんだ?」
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