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「お前に楔を打ち込んだのは…俺だ…。」
目が見えないという事は必要以上に体力を使う様で、井端甫は部屋に戻って直ぐに、風呂にも入らずに眠ってしまった。
ベッドの上で寝息を立てている井端甫の頬をそっと撫でながら呟いた。
「篤志…。」
頬を撫でていた手に触れる少し冷たい手。布団も掛けずに眠っていた為に、少し体が冷えてしまっている。
「起きていたのか?」
「ううん、今起きた。」
「起こしてしまった…悪い。」
謝る向田篤志の手をそっと握りしめて、その隣に腰掛ける。ベッドの淵に2人で座ると、少しベッドが軋んだ。
「ねぇ、篤志…知ってる?誰が篤志を家に呼んだのか…」
「甫のお父さんだろう?」
井端甫は下を向いたまま首を横に振った。柔らかく艶のある黒髪がふぁさふぁさと揺れる。距離が近い為に、たまに首に触れる髪が少し擽ったい。
「違うよ。…俺が、父さんに頼んだんだ。最初、篤志を見つけた時はすごく怖そうなお兄さんが歩いてるって思った。でも、着てる物もボロボロだし、なんだか可哀想で、家の中から何と無く見ていたんだ。」
深く腰掛けている為に、床に足がつかない井端甫は、ぱたぱたと足を動かし、まるで子供の様だ。恐らく何かしてないと恥ずかしいのだろう。
「そんな怖そうだったか?」
「かなり…ね。だって篤志が家に来た時、俺はまだ高校入ったばっかりだったし…」
「そっか…。」
「でも…さ。かっこよかったよ。雨が降って来て、オールバックにしてた髪の毛が落ちちゃってさ…水も滴るいい男って感じ。」
井端甫の耳が真っ赤になっているのが、黒髪に隠れて少しだけ見える。きっと顔も赤くなっているのだろうと想像し、興奮しそうになる自分を慌てて抑える。
ー俺は何を考えてるんだ??
「ずっと見てたのか?」
「うん…。だって、ずっと家の前にいたし…気になって眠れないし…だから、頼んだんだ。父さんに。」
「お父さんは、俺が陣内の若頭だって知っていた。よく反対されなかったな。」
ずっと下を向いていた井端甫が突然顔を上げて、そのままベッドに仰向けに転がった。ベッドが少し軋みをあげ、反動で向田篤志が上下に揺られた。
「だって、初めてのお願いだったんだ。俺さ…両親にお願いってしたこと無かったんだ。忙しそうだったし、何と無く、親なのに気を使ってた。多分、だからかな?」
照明が眩しいのか、顔に手を翳している。初めてのお願い事が自分を助ける事だったことに、なんとも言えない愛おしさが溢れてくる様で。目の前で無防備に横たわる愛しい人を、抱きしめたいと思った。
「明日も仕事がある。早く風呂に入った方がいい。」
向田篤志は、今にも手を出してしまいそうな自分を落ち着ける為に、井端甫に風呂に入ることをすすめた。
「バカ…。」
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