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「おはよう。春一」
「ああ、おはよ。」
翌日になっても、九十九昴と藤城悠は帰って来なかった。
心配してなかなか寝付けなかった井端甫は、まだ起きていない様で、向田篤志だけが姿を見せた。
「あれから、悠達は?」
きっと、ずっと起きて待っていたのだろう有村春一は静かに首を横に振った。
「……そうか。」
藤城悠と九十九昴が『SUBARU』を出てから一切連絡が無い。九十九昴も藤城悠も、賢く、連絡を怠らない几帳面な性格だ。
連絡が無いことから推測されるのは、二人の身に何かが起こり、連絡を取れない状況にあるということだった。
「彼奴ら…一体何処に行ったんだよ…。」
睡眠をとっていない事からの疲れからか、もしくは精神的な疲れからなのか、顔を両手で覆い、普段からは考えられない様な台詞を発する。
「とりあえず、今日一日待ってみよう。…それでも二人が帰って来なかったら、俺が探しに行く。お前は少し、寝た方がいい。」
有村春一の頭をぐしゃぐしゃと雑に撫でると、彼はしかめっ面でその手を払いのけ、しかし、促されるままに自室へと消えた。
「本当に、何処に行ったんだ…。」
二人のいない『SUBARU』は、その原因からもあり、いつに無く暗い雰囲気に包まれていた。
普段はあり得ない、ホールにたった一人きりという状況にその広さを実感する。
『SUBARU』に来てから、店が広い事は分かっていたものの、常に客がいるか、九十九昴達がいた。
たった一人きりの空間はとてもとても広かった。
彼らが帰ってくれば、この広い空間も、何時もの『SUBARU』に戻る。
「早く…早く帰ってこい…悠、昴。」
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